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8.25.2018

主要メデイアの偏りと人々の思い込み

日刊ベリタ2018.07.18記事の転載です

主要メデイアの偏りと人々の思い込み
現在の世界を動かしているものは、大国の権力者とその背後にいてメデイアを動かしている人々、そしてそれに洗脳されてしまっている人々の動きである。そのいくつかの顕著な例を簡単に議論する。
(1)数日前のBark at Illusion氏の「合衆国政府に合意の順守を求める朝鮮政府を貶めるマスメデイア」(*)、これは、米朝会談の実現を阻止しようとする米国内の動きに対応したものであり、この朝鮮半島の非核化問題の根本には米国の絶えざる脅威があったことに起因することの理解がない。そのために、金正恩氏とトランプ氏の達成したことを信じようとしない。金氏の裏工作を示唆し、非核化を推進するより、核保存にいくような雰囲気作りに箔をつけるようなとんでもない方向に導いていることを自覚していない。東アジアの平和を祈願するならば、まずその根本にあるアメリカの脅威をなくそうとした(おそらく、トランプ氏はそう考えていた)方向を推進するような報道をするべきであろう。
(2)あの米朝会談の1ヶ月後、今度は、米ロ会談が実現した。これに対する米国内の報道は、まったく狂っているとしか言いようがない。それは、2016年の大統領選挙にロシアがトランプに有利になるように介入したというウソを、アメリカ全体の機関(CIAFBIその他)や報道機関が、アメリカ体制派(ネオコン)に支配されていて、確たる証拠もないまま、ウソを追求している。それに支配されているリベラル派まで、ロシアがあの選挙に介入しなかったということをトランプが承認したとして、国家反逆罪だといった指摘を、例のリベラルの代表者(マイケル・ムアー)まで言っている。ウソを続ければ、ウソがホントウになってしまうというナチスの言ったことが現実化している。そして、トランプが、ロシアとの関係改善を意図することまで、犯罪扱いになっている。ロシアをなんとか、やっつけたいという、従って、ロシアをなんとか悪者にしたいという体制側の意図が、多くの米国民に浸透してしまっているようである。
 さて、これらの現象の基礎にあるのが、先頃から言っている(**)トランプ氏の、ネオコンにとらわれていない態度の現れなのでしょう。しかし、トランプ氏は、米ロ会談直前には、NATOで、加盟国からの軍事費の増額を訴えていて、ロシアとの緊張緩和とは矛盾することには、考えが及んでいない。しかも自国を擁護するためとして、単純に輸入税の増額など、このあたり、不動産業で財を成したビジネスマン意識が横溢している。
(*) http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201807151458070

6.13.2018

トランプ大統領の底意−3:米朝首脳会談に関して

以下は、日刊ベリタ2018.06.13に掲載されたものである。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201806131050023

トランプ大統領の底意−3:米朝首脳会談に関して

先頃、朝鮮半島問題、シリア問題などに関して、トランプ大統領の底意なる考えを書いてきた(1、2)。その根本は、トランプ氏が、ビジネスで富を築いてきた人で、第2次世界大戦後のアメリカの主流であるネオコン的考え方を知らずに大統領になり、私的ビジネス感覚でのみ、政策を実施してきたという点である(1)。
 2018年6月12日、歴史的米朝首脳会談。先の論でも展開したように、トランプ氏は、これまでの米国主流の考え方:米対中露という構図に北朝鮮を位置づける:には拘泥する必要を感じない感覚で、北に対したために、北が、対話に応ずることを了承。アメリカの主流は、徹底的な非核化を主張して、対話を反故にしようと努力してきたようだが、トランプ氏は、会談直前までは、それに耳を傾けるかの様相をしておきながら、会談では、自己の考えにしたがった。核放棄を、彼自身放棄したとは考える必要はないが、おそらく、金主席が、対話を通じて米朝関係が融和に行くならば、核放棄は当然ながら実行すると考えたものと思われる。金氏は、最初からそう主張している。アメリカの武力行使の危険さえ回避されれば、北朝鮮が核を保有する意味がないと。トランプ氏は、現在の米韓軍事演習を戦争ゲームと表現し、今後中止することも表明した。金氏が現在、もっとも苦慮しているのは、彼の国の国民の経済基盤を回復することであることは、彼自身も言っているし、外から見ても明らかである。
 それに対して、日本のメデイアは、金氏の核放棄その他の言を信用せず、今回の会談を、核の更なる開発をするための時間稼ぎとかなんとか、ばかり。どうして日本は、最近接国の平和への移行を歓迎しないのだろうか。なぜアメリカのネオコン的態度に固執するのだろうか。
 アメリカの全歴史を見ると、大方は、覇権意識が強く、武力行使も辞さない態度が徹底しているようである。この権力構造は、近年は、金融/軍需産業などが頂点になって、その傾向がさらに顕著になってしまった(3)。このような構造に乗っとられた政治家達が、政権を握ってきた。その結果の一つが、所得の格差の増大であり、それに業を煮やした市民の声が、トランプ氏を呼び寄せ、共和党内でも、自党から大統領をということで、トランプ候補を押した。その結果が、これである。私が、アメリカの友人から聞いたトランプ支持の意見は、自力であれだけの富を築いた、アメリカ的成功の例で、尊敬に値するというものであった。私自身は、そのような考えに同意しないが、主流の覇権意識を第一義にしないし、ビジネス優先ということでは、ロシアとも仲良くしようではないかといった意識は、現在の世界での緊張緩和に貢献するのでは考えている。
 このビジネス優先は、今回のカナダでのG7会議でのトランプ氏への徹底批判に反映していて、トランプ氏の底意が批判されることにはなった。これは、経済のグローバル化の是非とも関連している。これに関しては(4)をご覧ください。
(2)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201805191003546
(3)「病む現代文明を超えて持続可能な文明へ」(落合栄一郎、本の泉社、2013)


5.22.2018

トランプ大統領の底意−2

先頃、南北会談に関連して、トランプ大統領の底意なる小文を掲載した.これは、その続きであり、日刊ベリタ2018.05.19に掲載されたものである。

トランプ大統領の底意−2

ひと月ほど前に北朝鮮、シリア問題に関して、トランプアメリカ大統領の底意なる考えをこの欄に書いた(1)。その基本は、トランプ氏が、アメリカの伝統的政治外交などについての知識を持たず、稼げればよいという単純なビジネスマン的意識を持った人であるという考えに基づいていた。それが、ネオコン達の考えを無視した態度で、北朝鮮やシリア問題に対処してきたのではないかという考えであった。
 もちろん、こういう考えが、アメリカの政治・外交の主流の反撃を受けずに、うまくいく確率は非常に低いことは事実である。南北会話による融和ムードと、米朝首脳会談への期待が高まっているなかで、それを阻止しようとする側のプレッシャーが高まっているのであろう。北への要求が、おそらく1—2ヶ月前よりも厳しくなり、いわゆるリビア並の要求になった。リビアというより、ガダフィ政権は、そうした要求に屈した結果、数年後には人道的救済という美名の基に、崩壊させられてしまった。イラクのフセインも、大量破壊兵器を所有しているなどとのウソ情報に基づいて、レジームチェンジ、民主化と称して、これも虐殺されてしまった。
 北が最も警戒しているのは、このようなリビア型の締結を強要されることである。おそらく、ネオコン側の圧力で、このリビア型協定が主張されるようになり、おそらく軍部の主張で、B52とかF22などの攻撃機までもが、511日からの演習に加えられ、北への威嚇を表現した。その警戒心から、北が突如として、米朝対話への疑問を表明した(515日)。非常に危険な状態である。韓国も日本も、そして、中国、ロシアも、アメリカ側を説得し、朝鮮民主主義人民共和国が、受け入れられ易いように、仕向けるべきである。この機会を逃したら、もう後がない。おそらく、トランプ氏自身は、そうした説得には耳を傾ける可能性がある。
 さて、これが、トランプ氏の底意の一つだが、もう一つ問題がある。それは、エルサレムをイスラエルの主都とし、また、イランとの核合意からの離脱である。これは、アメリカ国民の多くに共通の宗教の問題と、イスラエルのシオニスト的観念をもつユダヤ系アメリカ財界の政治への影響力である。現在までの主流である白人達の宗教キリスト教は、ユダヤ教を超越した新たな考え(新約聖書)に基づいてはいるのだが、キリスト教は今でも、ユダヤ教のもとである旧約聖書も、同等に扱っており、キリスト教の神概念は、ユダヤ教の神概念を超越したはずなのだが、大方は同等に扱い、そのように意識している。シオニストは、あのパレスチナの土地は、神によって彼等に与えられたものだと信じており、イスラム教徒などはそこに住む権利はないと思い込んでいる人が多い。だから、その聖都エルサレムがイスラエルの主都であることは、彼等にとっては当然なことなのである。アメリカ政界の右(共和党)も左(民主党)もアメリカ大使館のエルサレム移転を歓迎している。トランプ氏も例外ではない。その上に、彼は、ユダヤ系財界から、かなりの援助を受けている。というわけで、イスラエルの現政権、ネタニアフの言いなりにのせられていると思われる。これは、一応、アメリカの政治主流であるネオコンとは一線を画した問題であろう。イランを追いつめるのも、イスラエルの意向に沿っているものと思われる。なお、グアテマラでは、最近キリスト教福音派(原理主義—聖書をその辞儀通りに解釈)が台頭し、アメリカの忖度を期待して、その大使館のエルサレム移転を決めた。
 ここには、今回のイスラエル・パレスチナ問題ばかりでなく、一神教という宗教、特に原理主義レベルの問題だが、それを克服しているはずの、非福音派的人々にも、彼等の神がユダヤの神と重なり、イスラエル建国、そして現在のイスラエルの右派と同様にパレスチナが彼等固有のモノと思い込んでしまっている。アメリカ人(白人)にはこの傾向が強い。この点では、これはトランプ氏独特のモノではなく、アメリカ白人の共通意識。アメリカ上院は、また全員一致で、エルサレムをイスラエルの主都と認める決議をした(2)。他の西欧諸国民は、そうした観念を克服しつつあるが、いまだにその影響はあり、アメリカに対して、強い反応は示さない。イスラエル建国以来の問題の根本にはこれがあると思われる。信教の自由という根本問題もあるが。もう一つは、自分達の神の使者なるイエスを迫害したユダヤ系民族敵視が、ナチスのホロコーストを引き起こしたことへの反省から、イスラエルのやり方に反対の声を大きく上げられないことも理由だが。



4.27.2018

南北首脳会談の進展に関連して

2018年4月27日、歴史的な朝鮮半島南北首脳会談が、成功裏に終わったことは非常に喜ばしいことであった。これが米朝首脳会談へ繫げられて、朝鮮戦争終結、平和条約締結へと進めば、北朝鮮が核放棄をすることは、既に、金委員長は明言している。年明けの緊張感、そして、最近のG7での、緊張を継続するとの意向、安部/河野などの緊張維持(武力行使も辞せず)などなどの情勢で、こんなにも急速に、解決の方向に進展したのは、なぜなのだろうか。以下は、4月16日付の日刊ベリタの記事である。トランプ大統領が、これまでのアメリカ外交の中心思想であるネオコンといった主流の考えにとらわれない、ビジネス優先思考が、こうした対決姿勢をなんとか、緩和しようとしているのではないかという考えです。


http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201804160852301


トランプ大統領の底意

まずアメリカの伝統的な大統領のやり方は、前任者とはかなり違ったやり方を選挙中に誇示して、当選後はそれを実行に移す、これが選挙民への答礼。トランプ氏は、そうした選挙中の約束を守ることに必死である。それは、これまでのネオコンに支配され続けた政権とは無関係な、私的ビジネスでしか経験のない人の考え方に基づいていた。
 そして選ばれた早々、約束したTPP、パリ協定離脱などを宣言した。テロをアメリカ本土からなくすという約束のために、単純な考えに基づいて、イスラム諸国からの移民の制限も、堂々と宣言。アメリカ国内の雇用を擁護するとして、他国からの輸入に大きな関税をかけるという単純なやり方も実行。女性・黒人蔑視の考えも隠そうとはしていない。
 これと同等な単純な考えに基づいて、自分に有利なロシアとのビジネス関係の構築のために、ロシアとの緊張緩和を画策。ここから、彼の政権維持に障害が立ちはだかった。ロシアとの緊張緩和は、ネオコンにとってはとても受け入れられない政策であり、彼等は、様々なやり方で、そうした政策を阻止しようと躍起になった。選挙へのロシアからのハッカー疑惑を始め、様々なやり方で、トランプ氏を追いつめることを執拗にやり続けている。まあ、トランプ氏もロシアとのビジネスでは問題のあることは多いのだが、それは、外交・経済上(制裁)の緊張関係を続けいずれはロシア撲滅を狙う側とは違い、戦争の危機の減少方向へ向かうことが期待されたのだが。
 さて最近の動きはどうなのであろうか。まず、アメリカが長年続けてきた北朝鮮との和解の拒否。それは北朝鮮に核兵器開発を促してしまった。そして現在は、核兵器の放棄を確約しなければ、対話に応じないと言い続けてきた。トランプ氏自身もそれを継承してきたのだが、最近になって突如、直接会談・対話を歓迎する旨を発表し、世界中を驚かせた。彼の本意はどこに、そして裏で何が。
 そして、シリアでは、アメリカ軍の近々の撤退を表明した。ところが、その直後、化学兵器使用による市民への攻撃なるものが発生した。アメリカ、イギリス、フランスは、これがアサド政権によるものと断定し、しかも国連からの調査団が入る直前に、化学兵器製造・研究施設などを標的とするミサイル攻撃を実施してしまった。これは、トランプ氏の命令によって行なわれた。実は、同じ現象が1年前にもあり、トランプ氏は.あのような子供や女性の凄惨な姿を強調するヴィデオを見せられて、直ちに反応し、ミサイル攻撃を行なった。今回も同じ手法で、トランプ氏のシリアからのアメリカの撤退を阻止しようとする側が、この化学兵器使用なるトリックを用いたようである。ネオコン側が、どの程度、シリア情勢をロシアとの緊張拡大に利用しようとしているか、明らかではないが、あのあたりの混乱を継続して、イランそしてロシアへと手を伸ばす足がかりにしようとしているものと思われる。
 これに対してトランプ氏はどう考えているのだろうか。化学兵器事件は、本当にシリア政府側が行なったものと判断しているのか。そういう考えを持ちうるとしたら、どうして数日前に、アメリカ軍撤退を公言したのか。アメリカ軍を保持したい側は、あの事件がシリア政府側の犯行としなければならない。おそらく、その圧力に負けたか、負けたふりをしたのか。というわけで、少なくとも圧力に屈した形で、ミサイル攻撃を公に指示。そして、それは圧力側が示唆したように、化学兵器事件の証拠を破壊することにした。本当にあの事件が起こり、しかもアサド政権側がやったとすることを示したいならば、すぐにやって来る国連からの調査団の検視ができるように、残しておくべきだったでしょう。ただロシア側をあまり刺激しないように、これっきり1回だけの攻撃だよと強調している。本当に1回だけならば、ネオコンの意図とは大分違うであろう。
 というような理由からすると、今回のミサイル攻撃は、アメリカの主流派であるネオコンに屈した形で、攻撃はするが、ロシアとの関係悪化はなるべく避けるやり方をしたものと思われる。
 さて、北朝鮮問題のほうはどうか。まず、アメリカは、朝鮮戦争後なぜこんなにも長く停戦状態にしておき、平和条約を締結しようとしてこなかったのか。北朝鮮側がそれを望んできたことはまぎれもない事実。多分、地勢的に、北朝鮮は、中国、ロシア(ソ連)に睨みを利かす最適の場所と考えているものと思われる。平和条約を締結してしまうと、あの場所へのアメリカの影響力は、無くなってしまうと恐れられているのでしょう(ネオコン側で)。さてトランプ氏は、こうした内情を知ってか知らずか、こうしたアメリカの政策を単に継承し始めたのでしょう。回り(そして、それに追従する日本)からの圧力で、核兵器廃棄を理由にできるだけの圧力をかけるやり方に従っていた。しかし、冬期オリンピックを契機に、南北の歩み寄りが始まり、裏面でのアメリカとの交渉からも、トランプ氏は、北朝鮮を今までのように、縛り付けておくことに何らの意義も見出せず、それなら、いっそう、この機に、関係を修復するほうが、自分にとって得策だろうと考えたものと思われる。そして、おそらくそれが成功したら、ノーベル平和章までも、などと考えているかも。
 以上、見てきたように、トランプ氏が政権の座についたことは、アメリカのいままでの主流派であったネオコン的考えを、無知から覆すことになりつつあるのではないかと考えられる。ただし、メキシコとの国境に塀を築くとか、単なる思いつきの輸入税だとか、あまりにも素人、いや子供っぽいやり方が、問題だが。



4.09.2018

この機会に世直し運動を

下の論は、2011年東日本大震災とそれに続く福島第1原発事故の直後に日刊ベリタに投稿したものである。現在でも検討する価値があると思われるので、再掲載する。

この機会に世直し運動を
(2011.04.01)

強度9.0の地震に端を発する津波がもたらした今回のかってない大規模な天災と、それに付随した原発の重大事故という人災、発生後20日がたち、避難所で不便な暮らしを強いられている人々も多いし、災害地での生活手段の崩壊でこの先どうなることか、途方にくれている人々もまだまだ沢山おられます。そのような時に下のようなとてつもない(と考えられるかもしれない)提案など、耳を貸せないと思われるかもしれませんが、この機会を、日本(ひいては世界)の「世直しの機会」と捉えるのが、今回の犠牲者への贖罪となるだろうし、また、ことは急を要するのではないかと思う。というのは、今年度の予算案その他の審議、決定に、ここで提案することは、考慮されるべきだと考えるからです。

(1)まず、原発の安全神話が完全に崩れたことは、日本の人々ばかりでなく世界中の人々が実感できたことと思う。チェルノイブル原発事故による放射線障害の実情(http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/ja/)は大変深刻なようである。すでに世界各国で原発の見直しが始まっている。日本は、こうした原発廃止への動きの先頭に立つべき国であったのである。数個のプレートがかみ合う場所に位置する日本は,地震・津波の危険にいつも晒されている。そのような場所に危険な原子力発電所はもともと無理なのであった。しかるに、最近は、地球温暖化対策の一つとして温室効果ガス2酸化炭素を放出しないという理由のみで、すでに経済効果も安全性も十分に否定されている原発が、それを建設して儲ける人々によって、原発ルネッサンスとかいって推進されていた。今回の原発事故はそれに水をかけた。まず世直し運動の第1は:

『新規原子力発電所建設は不許可、現存の原子力発電所は早急に廃止、それに代わる再生可能で環境にやさしいエネルギー産業に力を入れるべし』

というもので、国民的合意を作り出し、政府・議会・企業側にその実施を迫る。エジプト民衆にならって、多くの人が声をあげれば、実現するのではないだろうか。しかし、原発側からの脅し(電力不足—停電)にも現実味はあるので、しばらく(10年単位の話)は我慢する覚悟はなければならない。それはエネルギー消費から極力無駄をなくし、原発や火力発電に代わるエネルギー源をより速やかに開発することで対処する。石油は遠くない将来になくなることは確実である。
  地球はすでにかなりの程度、放射能に汚染されてしまっている。ウランは、地球上に自然に存在するものであることは事実だが、ウラン鉱として特定の場所に固定されているかぎりその周辺を除き大きな危害を人類に与えない。人類はそれを無理矢理に掘り出して、人を殺す道具をつくり、その弊害を覆い隠すために、その平和利用として原子力発電を導入したのだが、多くの国で原発依存症を発症させてしまった。そこで使われまたは発生する放射性物質は、何十年、何世紀、何十億年という長きにわたって放射線を出し続けるのである。使用済みの放射性廃棄物は、安全に処理できない。 放射性物質は、これ以上世界中に拡散させてはならないのである。

(2)被災者援助、災害復興、インフラ整備には莫大な費用がかかるであろう。現在のような国の財政状態でどうするか。日本政府はまたまた赤字国債を発行して借金でなんとかしようとしている。今は,いやこれからの世の中は、人の命を大切に、国家予算は、そのために使うべきであり、人を殺すために「カネ」を使うべきではない。一方、現在の国家財政での基本問題の一つは高所得者への富の配分がより大きくなる仕組みになっていること(税率が低いなど)により、社会福祉・社会サービスなどへ十分な予算がいかない。この国家財政政策を次のように変えることが,第2の世直しである。

『軍事予算、米軍への「思いやり予算」などを減らして、被災者救援/災害復興に振り向けるべし』『富むもの(高所得層、企業)への増税による富のより公平な分配を』

しかし、日本は周囲を敵に囲まれていて、アメリカ軍の駐留も自衛隊の増強も不可欠であると思い込んでいる人々も多いのであろう。このような恐怖感は、軍需増大によって儲ける側が押し付けていることを見破らねばならない。それを悟らずに、軍備競争を(仮想敵国と)続けていったら、“人類は互いに殺し合うことに奔走して、「カネ」を注ぎ込んだため、ついには地球上から消滅した、なんと愚かなことよ”と、どこか別の星の生き物が書き残すことになるかもしれない。それはともかく、アメリカで軍事予算の肥大化が市民生活を圧迫しているように、殆どあらゆる国で、軍事費が人々の生活の資の多くを奪っている。こんなことは、人類にとってばかげたことであるということを、 今回の天災を機会に、上に述べた第2の世直し運動を起こし、日本から世界へ広めることによって、世界中の人々を納得させられるのではないだろうか。憲法第9条を持つ日本が、その理想を高く掲げる時が来たのである。これは人類の悲願なのである。この問題には、沖縄の基地問題などを含む日米安保の再考も含む。

(3)新しい文明を:上の二つの世直し運動は、現在の問題を直接に扱うが、これは次の段階をもたらすはずである。すなわち現代文明—大量物質消費文明・市場経済・金融支配経済—が持続できないという認識へと進むであろう。すなわち、第3の一般的世直し運動は、

『脱現代文明(大量消費/破壊的競争経済/金融支配経済)、そして真の意味での人民参加の民主主義へ』

これは非常に広範で、奥深い人類社会の変革である。おそらくこのような社会を実現しないかぎり、人類文明は持続できないであろう。現在のアメリカに代表される物質文明の問題点、そしてより持続可能性のある社会の概要を「アメリカ文明の終焉から持続可能文明へ」(下記)で述べたので参考にされたい。具体的にはどうするか、多くの人の知恵を結集しなければならない。
(参照:落合栄一郎「病む現代文明を超えて持続可能な文明へ」(本泉社、2013年)