Languages

For English articles, click HERE. 日本語投稿はこちらをどうぞ。点击此处观看中文稿件

5.22.2018

トランプ大統領の底意−2

先頃、南北会談に関連して、トランプ大統領の底意なる小文を掲載した.これは、その続きであり、日刊ベリタ2018.05.19に掲載されたものである。

トランプ大統領の底意−2

ひと月ほど前に北朝鮮、シリア問題に関して、トランプアメリカ大統領の底意なる考えをこの欄に書いた(1)。その基本は、トランプ氏が、アメリカの伝統的政治外交などについての知識を持たず、稼げればよいという単純なビジネスマン的意識を持った人であるという考えに基づいていた。それが、ネオコン達の考えを無視した態度で、北朝鮮やシリア問題に対処してきたのではないかという考えであった。
 もちろん、こういう考えが、アメリカの政治・外交の主流の反撃を受けずに、うまくいく確率は非常に低いことは事実である。南北会話による融和ムードと、米朝首脳会談への期待が高まっているなかで、それを阻止しようとする側のプレッシャーが高まっているのであろう。北への要求が、おそらく1—2ヶ月前よりも厳しくなり、いわゆるリビア並の要求になった。リビアというより、ガダフィ政権は、そうした要求に屈した結果、数年後には人道的救済という美名の基に、崩壊させられてしまった。イラクのフセインも、大量破壊兵器を所有しているなどとのウソ情報に基づいて、レジームチェンジ、民主化と称して、これも虐殺されてしまった。
 北が最も警戒しているのは、このようなリビア型の締結を強要されることである。おそらく、ネオコン側の圧力で、このリビア型協定が主張されるようになり、おそらく軍部の主張で、B52とかF22などの攻撃機までもが、511日からの演習に加えられ、北への威嚇を表現した。その警戒心から、北が突如として、米朝対話への疑問を表明した(515日)。非常に危険な状態である。韓国も日本も、そして、中国、ロシアも、アメリカ側を説得し、朝鮮民主主義人民共和国が、受け入れられ易いように、仕向けるべきである。この機会を逃したら、もう後がない。おそらく、トランプ氏自身は、そうした説得には耳を傾ける可能性がある。
 さて、これが、トランプ氏の底意の一つだが、もう一つ問題がある。それは、エルサレムをイスラエルの主都とし、また、イランとの核合意からの離脱である。これは、アメリカ国民の多くに共通の宗教の問題と、イスラエルのシオニスト的観念をもつユダヤ系アメリカ財界の政治への影響力である。現在までの主流である白人達の宗教キリスト教は、ユダヤ教を超越した新たな考え(新約聖書)に基づいてはいるのだが、キリスト教は今でも、ユダヤ教のもとである旧約聖書も、同等に扱っており、キリスト教の神概念は、ユダヤ教の神概念を超越したはずなのだが、大方は同等に扱い、そのように意識している。シオニストは、あのパレスチナの土地は、神によって彼等に与えられたものだと信じており、イスラム教徒などはそこに住む権利はないと思い込んでいる人が多い。だから、その聖都エルサレムがイスラエルの主都であることは、彼等にとっては当然なことなのである。アメリカ政界の右(共和党)も左(民主党)もアメリカ大使館のエルサレム移転を歓迎している。トランプ氏も例外ではない。その上に、彼は、ユダヤ系財界から、かなりの援助を受けている。というわけで、イスラエルの現政権、ネタニアフの言いなりにのせられていると思われる。これは、一応、アメリカの政治主流であるネオコンとは一線を画した問題であろう。イランを追いつめるのも、イスラエルの意向に沿っているものと思われる。なお、グアテマラでは、最近キリスト教福音派(原理主義—聖書をその辞儀通りに解釈)が台頭し、アメリカの忖度を期待して、その大使館のエルサレム移転を決めた。
 ここには、今回のイスラエル・パレスチナ問題ばかりでなく、一神教という宗教、特に原理主義レベルの問題だが、それを克服しているはずの、非福音派的人々にも、彼等の神がユダヤの神と重なり、イスラエル建国、そして現在のイスラエルの右派と同様にパレスチナが彼等固有のモノと思い込んでしまっている。アメリカ人(白人)にはこの傾向が強い。この点では、これはトランプ氏独特のモノではなく、アメリカ白人の共通意識。アメリカ上院は、また全員一致で、エルサレムをイスラエルの主都と認める決議をした(2)。他の西欧諸国民は、そうした観念を克服しつつあるが、いまだにその影響はあり、アメリカに対して、強い反応は示さない。イスラエル建国以来の問題の根本にはこれがあると思われる。信教の自由という根本問題もあるが。もう一つは、自分達の神の使者なるイエスを迫害したユダヤ系民族敵視が、ナチスのホロコーストを引き起こしたことへの反省から、イスラエルのやり方に反対の声を大きく上げられないことも理由だが。