イスラエルのガザへの侵攻
(2014.8.06)
現在進行中のイスラエル軍によるガザ侵攻はジェノサイドそのもので、しかもアメリカはじめ主要な西欧諸国は、見てみない振りをしている。というより、アメリカは、イスラエルの侵攻を肯定しているーそれはイスラエルが自衛の権利であると正当化することを支持することにある。さすがに、国連関係の学校などが爆撃された時には、非難のリップサービスは行ったが。
この問題の根本部分は実は、ユダヤ教からキリスト教へと続く宗教の問題ではないかと思われる。もちろんそれに付随した対イスラムの問題もかかわってはいるが。ユダヤ人が2000年前に、あのパレスチナの地から追われて、世界中にちらばり、しかもキリスト教徒の、ユダヤ排斥というとんでもない間違った概念に凝り固まった西欧人が、ついにナチス政権で、ジェノサイドという極端なやり方に至った。それに対する西欧側の反省(?)が、第2次世界大戦後の、ユダヤ人のシオニズム運動を助け、あの地からパレスチナ人を追出して、イスラエル国を建設した。これが現在の問題の発端である。
イスラエル人は、パレスチナの地は、彼らの唯一絶対の神から、ユダヤ人に与えられた土地であり、パレスチナ人は住んではならない所、したがって、彼らを追出すのは、神の教えに従うことで、当然であるといった考えが染み付いていてのではないかと思われる。そして、ヨルダン川西岸の植民地拡大を公然と実施。パレスチナ人を押し込んだガザからも、いずれはパレスチナ人を追出すことを画策。そのために現在、様ざまな難癖をつけて侵攻。おそらく、欧米側が、断固とした態度を見せないことをいいことに、パレスチナ人追出しまたは、ジェノサイドを行っている。これは、ユダヤ教ーキリスト教における、絶対的神とそれを信仰する自分達が「神によって選ばれた民だ」という意識・狂信に、根本のところで支えられているものと思う。イスラエル人の大多数が、このガザ侵攻を支持しているのは、そういうことなのではないかと思う。
実際、イスラエルの政策・戦略は、こうした意識に基づいていて、「ダーヒヤ・ドクトリン」(ガザ・ドクトリン)と呼ばれるもので、2006年のレバノン攻撃で始まった戦略であり、住宅地を標的にして、攻撃対象とは不釣り合いな大規模な攻撃を行い、一帯を徹底的に破壊するという戦略だそうである(1)。シャロン首相の顧問も務めた人口学者ソフェルは、イスラエルがユダヤ‐シオニズム国家としてあり続けるためには、ガザのパレスチナ人を殺し、殺し、殺し続けなければならないと主張した(1)。それは、パレスチナ人が、増えてやがては、イスラエル人口を圧迫するという懸念からでもあろう。8月1日には、イスラエル国会の副議長モシェ・フェイグリンは、首相に呼びかけた書簡で、ガザ全土の征服と全戦闘勢力とその支持者の殲滅を呼びかけた。そして、「これは我々の国だ。。。我々だけの国だ、ガザも含めて」と云っている(1)。
自衛という正当化が妥当でるかどうか議論の余地があるが、イスラエル人とて、自らの領土拡張やパレスチナ人大量殺害が、世界的に認められ得るものではないことぐらいは、理性的レベルでは理解できるはずだと思う。残念ながら、宗教的狂信と政治的煽動、そして周辺国への恐怖心がその理性を殺してしまっているものと思われる。そしてこれには反イスラムという狂信も作用している。
イスラエル国民が、ユダヤ人とパレスチナ人の共存、またはパレスチナ人の国家との共存を認めさえすれば、この問題は解決するはずなのだが、今のところ、イスラエル側は、オスロ合意は反故にしてしまっている。こうなってしまった為に、パレスチナ側の戦闘派も、イスラエル撲滅を標榜せざるをえなくなっている。悪循環である。
オバマは、現実的にこの状態から抜け出させることができる、現在のところ世界でたった1人の人間だが、それができていない。おそらく、ユダヤロビーによる政治・経済への圧力が非常に強いのであろう。しかし、その上に、キリスト教徒の大多数にも、宗教的信念を絶対視するという観念が染み渡っているのではないかと思う。神自身がそう云っているように、ユダヤの神はねたみ深いので有名だから、その言い分に従わなければならないと思い込んでいるのであろう。キリスト教の神は、ユダヤの神の狭量さを克服したはずなのだが、ほとんどのキリスト者は、ユダヤの神の観念を克服できていない。その上、西欧市民の長年のアンチセミテイズムへの反省と、それを利用して、反イスラエル的言動を直ちに、アンチセミテイズム(人種差別)と極め付けるイスラエル側への慮りも作用している。おそらくこのあたりの宗教的狂信から抜け出せない限り、この問題の根本的解決はないのかもしれない。現在(日本時間8月6日)72時間の停戦協定が発効している。その間にもっと根本的な解決への糸口が開かれるとよいが。
現実への政治的対応(根本的解決にはとても及ばないだろうが)は可能であろうし、積極的にすすめなければならない。アメリカ議会のイスラエル支持・武器提供を変更するよう説得すると共に、多くの国から、イスラエルの現在のガザへの武力侵攻を非難する声を上げることが必要であろう。現在、民間では、イスラエル製品のボイコットなど様々な動きがあるが、その影響力は大きくはない。国連でも安全保障理事会は無理としても、もっと強い非難の声を上げるべきだし、多くの国からの国家レベルでの批判が望ましい。エクアドルのモラレス大統領は、「イスラエルはテロ国家である」として、イスラエル人への自由入国ビザ協定を停止した。エクアドルの他に、中南米のブラジル、チリ、ペルー、エルサルバドルは、イスラエルへの抗議の意味で、大使を引き上げた。ウルグアイ、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラの大統領は、共同で、イスラエルの圧倒的な軍事攻撃に抗議の声明を発表した。こうした声を多くの国が上げるべきであろう。
(1)http://electronicintifada.net/blogs/ali-abunimah/gaza-massacre-price-jewish-state; http://electronicintifada.net/blogs/ali-abunimah/concentrate-and-exterminate-israel-parliament-deputy-speakers-gaza-genocide-planに基づいて、その翻訳・解説を行っている岡真理さんという方のあるMLへの投書に基づく。
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