2017年8月6日に行なわれた原爆展での講演で、21世紀の核の問題点を指摘した。その講演の主旨を下に記す。なお、日本でも下記のように、この問題を論じる講演を行なうので、興味のある方はご参加ください。
10月26日:ちくりん舎(民間の放射能測定機関)14:00-
10月28日:脱被ばく実現ネットワーク;渋谷光塾 14:00-
10月31日:被ばく学習会;文京区アカデミー茗台 18:30-
11月03日:三陸の海を放射能から守る会など;岩手大 13:30-
11月04日:京都市民放射能測定所;キャンパスプラザ京都第3講義室 18:30-
21世紀の核問題
20世紀に人類は核分裂、核融合などの核の現象を発見した.そして早速、兵器に利用し、原爆、水爆なる悪魔の如き兵器を作ってしまった。現在、地球上には、15000ほどの核兵器がある。これは冷戦という資本主義対共産主義といった経済体制に基づく対立が、双方の国の破壊が可能な武器を開発することによって、武力侵害を阻止するためではあったが、作ってしまったものを使わずにおくのは、なかなか難しい。現在の核兵器が、大戦に使用されれば、人類の多数が消滅し、地球環境が大方破壊されかねない。これは、だれの目にも明白であり、今年の「核兵器禁止条約」で、非核保有国の大部分が、核保有国に、核兵器保有・使用を禁止すべきとするコンセンサスを突きつけた。21世紀初頭にようやくこぎ着けた成果ではある。
核兵器の悪を打ち消すためもあり、核が平和利用にも用いられることを、核を動かす側が推進した。結果、21世紀始めまでに、地球上に4百数十基の原子炉ができてしまった。一つの原子炉は、年に、広島原爆1000個分の核廃棄物を生み出す。これまでに、1970年ぐらいから、年平均200原子炉が稼働したとすると、広島原爆6百万個相当の核廃棄物(放射性物質)をつくり出した。膨大な量の放射性物質である。人類は、まだ、こうした廃棄物を安全に長期(数千年以上)にわたって、人間その他の生き物に害を与えないような保存法を編み出してはいない。おそらく、完全なものはないであろう。かなり良い方法が見つかったとしても、それに掛かる費用は、莫大なもので、正直にやろうとすれば、全人類の経済を破壊しかねない。
より厄介な問題は、放射性物質が微粒子の形で、様々な原因で核を扱う施設から放出されることです。こうして放出されたものは、知らず知らずのうちに人体や他の生物に悪影響を及ぼすのです。こうした作用によって、核産業ができてから、すでに少なくとも数千万人が犠牲になっていると思われるのですが、これは、微妙な作用で、大概はそれ(放射線の影響)とは認識されません。
核兵器禁止の議論では、こうした核の平和利用の問題点などは、議論にも上らず、少数者をのぞいて、おそらく世界市民の大分も意識すらしていないと思われます。
平和利用の問題の根本は、それがつくり出す放射性物質からの放射線が、生き物にとって非常に危険なものだからである。この講演では、これまでにあった、原発事故のみならず、あらゆる場での放射線による健康障害を概観し、なぜそうなのかを考えてみる。そして、その結果、放射線を出す物質はもうこれ以上作り出してはいけないのだ、核兵器禁止ではなく、核兵器も含めたより広範な「核禁止」をこの世紀のうちに、実現しなければならないことを強調する。