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6.13.2018

トランプ大統領の底意−3:米朝首脳会談に関して

以下は、日刊ベリタ2018.06.13に掲載されたものである。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201806131050023

トランプ大統領の底意−3:米朝首脳会談に関して

先頃、朝鮮半島問題、シリア問題などに関して、トランプ大統領の底意なる考えを書いてきた(1、2)。その根本は、トランプ氏が、ビジネスで富を築いてきた人で、第2次世界大戦後のアメリカの主流であるネオコン的考え方を知らずに大統領になり、私的ビジネス感覚でのみ、政策を実施してきたという点である(1)。
 2018年6月12日、歴史的米朝首脳会談。先の論でも展開したように、トランプ氏は、これまでの米国主流の考え方:米対中露という構図に北朝鮮を位置づける:には拘泥する必要を感じない感覚で、北に対したために、北が、対話に応ずることを了承。アメリカの主流は、徹底的な非核化を主張して、対話を反故にしようと努力してきたようだが、トランプ氏は、会談直前までは、それに耳を傾けるかの様相をしておきながら、会談では、自己の考えにしたがった。核放棄を、彼自身放棄したとは考える必要はないが、おそらく、金主席が、対話を通じて米朝関係が融和に行くならば、核放棄は当然ながら実行すると考えたものと思われる。金氏は、最初からそう主張している。アメリカの武力行使の危険さえ回避されれば、北朝鮮が核を保有する意味がないと。トランプ氏は、現在の米韓軍事演習を戦争ゲームと表現し、今後中止することも表明した。金氏が現在、もっとも苦慮しているのは、彼の国の国民の経済基盤を回復することであることは、彼自身も言っているし、外から見ても明らかである。
 それに対して、日本のメデイアは、金氏の核放棄その他の言を信用せず、今回の会談を、核の更なる開発をするための時間稼ぎとかなんとか、ばかり。どうして日本は、最近接国の平和への移行を歓迎しないのだろうか。なぜアメリカのネオコン的態度に固執するのだろうか。
 アメリカの全歴史を見ると、大方は、覇権意識が強く、武力行使も辞さない態度が徹底しているようである。この権力構造は、近年は、金融/軍需産業などが頂点になって、その傾向がさらに顕著になってしまった(3)。このような構造に乗っとられた政治家達が、政権を握ってきた。その結果の一つが、所得の格差の増大であり、それに業を煮やした市民の声が、トランプ氏を呼び寄せ、共和党内でも、自党から大統領をということで、トランプ候補を押した。その結果が、これである。私が、アメリカの友人から聞いたトランプ支持の意見は、自力であれだけの富を築いた、アメリカ的成功の例で、尊敬に値するというものであった。私自身は、そのような考えに同意しないが、主流の覇権意識を第一義にしないし、ビジネス優先ということでは、ロシアとも仲良くしようではないかといった意識は、現在の世界での緊張緩和に貢献するのでは考えている。
 このビジネス優先は、今回のカナダでのG7会議でのトランプ氏への徹底批判に反映していて、トランプ氏の底意が批判されることにはなった。これは、経済のグローバル化の是非とも関連している。これに関しては(4)をご覧ください。
(2)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201805191003546
(3)「病む現代文明を超えて持続可能な文明へ」(落合栄一郎、本の泉社、2013)