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8.19.2022

原発破壊=核の平和利用の危機

 

現在のウクライナ戦で、ここ数週間に起こったこと(注1)から想像するに、原発が破壊され、大規模な、非常に広範囲の放射能汚染が懸念される。ウクライナ東部にあるヨーロッパ最大といわれるザポリジア原発で、現在6基中3基が稼働中である。ロシアは、ウクライに入ってきてまもなく、この原発のある地域を支配し、原発は、ロシアの管理下で、ウクライナ従業員によって問題なく稼働している。ロシアが侵攻する際、ロシア側の攻撃で、原発に火災/爆発が起こったことはある。ただし、放射線漏洩などはなかった。なお、この地域の住民はロシア系が多いそうである。

 ウクライナそしてNATO側は、ロシアはそうした危険な場所に居を構えることによって、ウクライ側からの攻撃を躊躇させ、そこで、ウクライ攻撃への重要拠点にしていると非難してきた。しかし、現実は、ロシアがこの原発からウクライナ側に攻撃をしかけたことはまだない。攻撃を仕掛ければ、その仕返しがあること(危険)は分かっているのであろう。その原発へ、ここ2、3週間に数度の攻撃(ミサイルなど)が行われた (注1)。米国側やゼレンスキーは、この攻撃は、ロシアによると非難している。この主張には、とんでもない論理の矛盾、ウソがある。彼らは、この原発を、ロシアがウクライナ向けの攻撃地としていると主張しながら、その原発への射撃が、ロシアによると主張するようだが、どんな理屈からそんなことが言えるのだろうか。

 現在、米英/NATO側は、ロシアが(軍事的)核使用をチラつかせていると主張し、ロシアの悪巧みを強調している。これは、そうした情報をチラつかせて、自らがウクライに参戦すると第3次世界戦争にまで発展しかねないからと、米英/NATO/EU側は、ロシアへの自力による攻撃は控えて、ウクライナに大量の武器などを送り、ロシア脆弱化をウクライナにやらせている。現在のゼレンスキーはそれに乗せられて、自国民の犠牲などは顧みず、武力衝突を継続している。そのため、女子供の国外への避難は許しているが、男性の国外避難は禁止している。彼は、自分の意に反するものは、容赦無く排斥、虐待している。実際、政治活動(国会)では、自分の党(“民衆の僕”だそうである)以外は、全て禁止である。これが、米欧の主張しているウクライナ=民主主義 ロシア=全体主義の実情である。

 ゼレンスキーは、2019年の選挙で、圧倒的多数(75%)で当選したのである。なぜかと言えば、ウクライナ東部の問題の解決、ロシアとの対話、NATOへの不参加などを主張して、国民はそれを信じたから。この選挙での相手(ポロシェンコ)はNATO加盟を主張。しかし、当選後、ゼレンスキーは速やかに米英/NATOなどの傀儡になり、現在に至っている。この経過からしても、ウクライナ国民の多数は、ロシアとの対決を望んではいないことがわかる。ところが、ゼレンスキーに加えて、ロシア憎しの精神に貫かれているネオナチ的精神の戦闘好きの人々(アゾフ隊など)に象徴される、ナチ的

考えが現在のウクライナの政策決定の主体になってしまい、ネオナチ軍隊が政権側の軍事力の主体になってしまった。それは、米英側にとっては、非常に好都合なのである。

 国連もIAEAも、原発の周辺に非戦域を設け、IAEAなど、国際的監視の下におくべきと主張している。そして国連事務総長グテーレス氏が、ウクライナを訪れて、調整を試みている。ウクライナ側は、まずはロシアの原発からの撤退を前提としていて、議論は噛み合わないようである。

 最近の情報(注2)では、この原発側はいつでも、IAEAを受け入れると言っている。しかるに、欧米側(日本、オーストラリアなどを含む)も、ゼレンスキー同様、直ちに、ロシアにザポリジア原発から退去しろという決議をした(注3)。いや、ゼレンスキーは、この欧米側の主張を繰り返している。

 こうした側は、原発を問題にする以前に、この紛争を解決する努力をするべきだが、その動きは一向に見えない。どうも、国連も、欧米側の支配下にされてしまっているようである。米英はともかく、ザポリジア原発が破壊されたら、大変な被害を被るであろうEU側は、ロシア憎し/殲滅すべきという観念が支配してしまっていて、そんなことが起こりうる現在のウクライナ問題を解決するべく努力などは全然していない。EU市民は何を考えているのであろう。

 ウクライナも初期には、原発攻撃の危険性を意識していたようだが、最近の原発攻撃(先に述べたようにウクライナによるとしか考えられない)から判断するに、そうした危険性を無視する傾向も出てきたようである。原発を攻撃する姿勢を示し、恐怖を募らせ、ロシアを追い出そうとしているのであろう。今のところ、放射性物質放出にまでは至っていないが、放射線量測定機などが壊されたらしい。非常に危険な状態である。

 もちろん、米英/ウクライナ側は、ロシアは、この原発から直ちに退去せよと主張している。そうすれば、ウクライナ側は、今までやってきた仕方(学校、病院など、市民に危険が及ぶ可能性のある場所を軍事基地にする)で、原発を好都合な軍事基地に使う可能性がある。現在のウクライナ政権側のやり方(市民を盾にして攻撃をためらわせる)は、アムネステイーインターナショナルの調査で検証された(注4)。原発の場合は、単に攻撃を躊躇させるため。こうしたことを避けるために、ロシア側は、侵攻時に速やかにこの原発を支配下に置いたのであろう。侵攻直後のチェルノブイリ支配も、同様な目的であったろう。この場合も、電力源が断たれるなどして、非常に危険な時があったが、ロシア側が、チェルノブイリのすぐ北のベラルーシから電力を供給する手筈を整えて、危機を乗り切ったこともある。その後の事情は不明。チェルノブイリはキエフに近いので、ウクライナはその扱いに慎重を期していると思われる。

 原発は、核兵器ではないが、戦争においては、核兵器となる。通常の核兵器は、それを用いる側が、投下により、または核弾頭ミサイルのような形で相手側に打ち込み、大被害をもたらす。原発は、核の平和利用ということになっているが、戦時には、ミサイルなどの攻撃にさらされて、破壊されれば、原発と同様な被害(人的、環境上の)を及ぼすことになる。戦争までに至らなくとも、テロによって原発が破壊される可能性もある。しかも、原発内の放射性物質の量は、通常原発の数百倍以上である。現在世界中に450基ほどの(平和)原発があるが、いざ戦争となれば、核兵器になる。ですから、現在での「核兵器廃絶」条約は、「核廃絶」条約に拡大しなければならない。そして、なるべく早く速やかに、核物質を安全に処理する努力が、人類の緊急の課題である。筆者の核に関する著作の1冊目の副題は「原爆/原発は人類の過ち、全廃に向けて猶予は許されない」(「原爆と原発」(鹿砦社、2012))であった。

 

 

(注1)https://www.rt.com/news/560680-world-brink-nuclear-catastrophe-moscow/

(注2)https://www.rt.com/russia/560858-un-blocking-iaea-zaporozhye-inspection/

(注3)https://www.asahi.com/articles/ASQ8C72ZXQ8CUHBI02Z.html?iref=comtop_7_06

(注4)https://www.rt.com/russia/560333-amnesty-stand-by-report-ukraine/


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