(2007.02.23)
現政権は憲法改定を最大目標に掲げ、今夏の参議院選挙では国民の憲法改定への意識や動向が測られるものと思われます。そこで、日本での9条を守る会に呼応して当地にできた憲法9条を守る会VSA9(海外では最初)を紹介し、それよりのメッセージをお伝えしたいと思います。
日本の9条を守る会は、加藤周一、小田実、井上ひさし氏ら著名な9名の方々が、憲法、特に9条が変えられてしまう可能性を危惧して2004年6月に始められた。ここバンクーバーでは、2005年5月に地元の有志が集まってVSA9を結成した。以下のこの会に関する記述は、会員の乗松聡子氏の報告書(”バンクバー九条の会;多文化社会カナダから日本へ,そして世界へ”(仮題)in「世界から見た九条〜九条から見える日本」(仮題)(笹本等編、かもがわ出版社、2007年出版予定)を参考にした。
カナダバンクーバー9条を守る会(VSA9)
カナダバンクーバー市のはずれにブリテイッシュコロンビア大学があり、その構内に新渡戸記念日本庭園がある。新渡戸稲造は、国際連盟事務局長として洋の東西の架け橋になるべく努力したが、ここBC州のビクトリアで客死した、その記念である。現在では、バンクーバーは真に「東と西の接点」といってよく、多民族都市である。例えば市内を走るバスの時刻表には、英語、フランス語、スペイン語、日本語、中国語、韓国語、ヒンデイー、先住民族語で書かれているものがある。
さて2005年5月に10人ほどで発足したVSA9は、2005年秋からの映画「日本国憲法」の上映をきっかけに会員が急増し、現在150名ほどの会員を抱えている。日本語を解する会員が約110名、その他40名程は様々な背景のカナダ人である。日本人会員のうち73%が女性、男性は圧倒的に少ない。しかも男性の多くは、戦争経験のある世代であり、20—40代の男性は少ない。おそらく、日本での憲法への関心度の世代分布も似ているのではないかと思われる。
先述の映画上映は、日本憲法とその改定の動きに関心を高めるのに貢献したが、会として継続している活動には、まず9条改定阻止の請願書への署名を集めることがあり、現在までのところ3000程の署名が集まった。月例会を設けて種々な平和に関連する問題についての講演、ヴィデオ上映と討論も継続している。例えば「劣化ウラン弾」の研究と阻止への動きに対応することとか、「撫順の軌跡」という満州出兵者の戦後における自己変革の物語など。
2006年6月23日からの1週間、バンクーバー市主催で「世界平和フォーラム」が開催された。全世界から8000人の運動家、市民、政治家が集まった。VSA9は日本の平和運動団体ピースボートと共催で、「日本国憲法9条—平和のための人類共通財産」なるワークショップを催し、また原爆被爆者の証言も含めた原爆関係の催しにも関わった。平和フォーラムの最終文書「バンクーバー アッピール」には,「(各国)政府は憲法で戦争放棄を定めること(例えば日本の9条のように)」と明記された。会員の一人は、ピースフィロソフィーなるサイトを始め、またアジアの若者達の交流を促進する運動を進めている。
さて,バンクーバーは、先述のように、種々な背景の人々が集まっているので、それを通じて「9条」の思想すなわち平和の思想を各国に広めるには適しているものと思われる。これが、VSA9の課題の一つであるが、さしあたりの緊急課題は、日本政府/与党/財界などによる憲法,特に9条改定の動きをくい止めることである。そこで、次にバンクーバーからの(平和)メッセージを日本の皆さんにお伝えします。
カナダバンクーバーからのメッセージ
先にも述べたように、日本の憲法9条は、平和を愛する各国民の羨望の的であり、なんとかして自分達の国の憲法にも取り入れたいと思っている人々が世界中にいるのです。そのような憲法を日本国政府は改定して、自衛軍を事実上の通常軍隊にしようとしているわけです。軍隊を送ろうとする先は、集団自衛権行使の名の下に、アメリカの言いなりになることです。現首相は憲法がアメリカに押し付けられたもの(最近のNHK番組でこのでっちあげの嘘が暴かれましたが)ということを改定の理由の第一にあげていますが、改定の動機はアメリカに押されたからであり、そしてその上でアメリカの言いなりになるためのようであり、まことに自己矛盾も甚だしいと言わざるをえません。
憲法(9条)が政府与党の言うように改定されると次のような事態が生じるでしょうが、皆さんはこういう状態を好ましいとお思いでしょうか。
(1)イラク戦争のような、道理に叶わない戦争などにかり出されて命を落としたいですか。カナダは賢明にもイラクには出兵していないが、アフガニスタンにはNATOの一員として2700人ほどの兵士を送っており、すでにそのうち44人ほどが命を落としています。
(2)親、兄弟、夫、子や孫が、このような戦争にかり出されるのが嬉しいですか。
(3)憲法を改定して、世界各国から非難を浴び、孤立を強いられるのが好ましいですか。特に、先の戦争で、日本が甚大な被害を与えた国々は、日本が再び侵略戦争を起こしかねない可能性を危惧し、軍備拡張に向かい、国際間の緊張は増すばかりになるでしょう。そういう状態が好ましいですか。
(4)戦後62年間、日本は(憲法のおかげで)戦場で一人の人も殺していないという輝かしい記録を持っていますが,それを打ち破りたいですか。
こういう事態が好ましくないとお思いでしたら、どうか憲法、とくに9条を変えないように、変えようとする動きを阻止するように働いてください。そのためにも日頃、下のような警句を口ずさんで、日本国民の間に流行らせてください。
「そのまんま 変えるな憲法 9条を」
「そのまんま 変える要なし 憲法(または9条)は」
「そのまんま そのままでよい 日本憲法」
(落合栄一郎、VSA9会員)
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