アメリカの中国、ロシア包囲作戦
(2010.07.22)
アメリカは、着々と、中国・ロシアの包囲・封じ込め作戦を展開している。冷戦体制がぶり返したかのようである。なぜアメリカはこのような政策を執拗に追求しているのかはさておき、その現状を眺めてみよう。
先ずヨーロッパから。アメリカは旧ソ連圏からヨーロッパ連合・北大西洋条約機構に加盟した国々に,弾道ミサイルの基地を建設している。ロシアの反撥に対して、アメリカ側は、イランからの攻撃への迎撃基地と称しているが、説得力はない。
次に中東。石油が主目的であったのかどうかはわからないが、イラクをウソで固めた理由で占領し、イランを虎視眈々と狙っている。殆ど戦闘準備完了に近い現状らしい。アフガニスタン、パキスタンなど、殆ど無意味と思われる戦闘を継続しつづけている。そして、この後背地である中央アジア諸国との関係も深めている(軍事基地建設)。この動きには、北大西洋同盟国も参加している。インドとは核兵器容認なども含めて連係を深め、アメリカ側に引き入れている。
残るは、東南アジア、東アジアである。今年の夏この地域で、アメリカ軍を含む軍事演習が大規模に行われているし、計画されている。アンコールセンチネル10なるプノンペン近郊でのアメリカ軍主体の多国籍軍とカンボジア軍との合同演習が7月9−30日にかけて行われている。カンボジアの安全のためとカンボジア軍の能力を引き上げて国連平和部隊に参加できるようにするのが目的だそうである。アメリカ軍とマレイシャ軍合同のケリスストライク10なる訓練は、マレイシャのクアンタンで、7月19—23日に行われる。これらの軍事訓練は、2014年までに世界規模の平和維持部隊建設とそのための軍輸送を含むサポートシステムの建設の一環なのでそうである(http://www.army.mil/standto/archive/2010/07/12/)。
さて、東アジアである。先頃の韓国軍哨戒艇沈没事故も米韓軍事訓練に際して起ったのだが、北朝鮮と中国に警告を発する目的か、原子力空母(USS ジョージワシントン号、横須賀駐留)など最新兵器を含む大規模な米韓合同訓練が朝鮮半島の西(黄海だが、中国領には入らない)と東(日本海)で行われると発表された。日本海側でも行おうとするのは、ロシアへの牽制と示威表示と思われる。
以上述べたアメリカの関与する軍事訓練が行われる国々を地図の上に表示してみればわかるように、ほとんどロシア,中国を囲む形になっている。イランについてはイスラエルとの連係がある。またコーカサスの北のグルジアなどの国々にもアメリカはちょっかいをだしている。今のところ、アメリカ側に与していないのは、トルコのみのようである。
アメリカ/NATO諸国による中国・ロシアの包囲—その2
(2010.08.14)
先に(日刊ベリタ2010.07.22)アメリカ(とNATO諸国)が着々と中国・ロシア封じ込み作戦を展開していることを報告した。この動きはさらに様々な方面で拡張されつつあるようである。
今回はその最近のさらなる動きを紹介する。まずは、日本でもすでに報道された米・韓合同軍事演習で、黄海と日本海で、日本の自衛隊の視察官も含めて、原子力空母、戦闘機F−22(日本には売ってもらえなかった)などを含む最新兵器を用いて行われた。黄海側では、北京から見て500kmほどの距離まで進出したようである。この演習は、中国、北朝鮮そしてロシアに、こうした最新兵器が至近距離に実戦体制にあることを見せつけた。すでに東、東南アジアには、オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイ、シンガポールなど(軍事)同盟国を展開している。これらの同盟総体を、NATOになぞらえて、アジア(軍事)条約機構と呼ぶことがある。アメリカはアジア条約機構を拡大しつつある。インドとは、毎年、マラバール海軍戦争ゲーム(演習)を催しているが、2007年には日本,オーストラリア、シンガポールも加えられた。米国防省は最近キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンに軍事訓練基地を建設すると発表した。これらの中央アジア諸国への進出にはヨーロッパNATO諸国も参加している。アフガニスタン戦に参加している国は47カ国にのぼるが、アジア地域からは、シンガポール、モンゴリア、韓国、オーストラリア、マレーシアなどがある。
7月19—23日には、米空軍とシンガポール主宰で、環大平洋空軍戦力シンポジュームが開かれ、東・東南アジアの大部分の国が代表を送っている。また8月1日には、隔年毎に1ヶ月にわたって行われる環太平洋戦争ゲームがハワイで終結した。これには、南米ペルー、チリーも含む環太平洋の14カ国からの2万の兵士と、36隻の軍艦、潜水艦5艘と戦闘機170機が参加した。8月5日には、8個師団の陸軍兵士が2週間の合同軍事演習のためにネパールに到着したそうである。これらを先に報告したものに加えてみていただきたい。なんとまあ、あきれるほどの軍事演習が、中国・ロシアを取り囲んで、行われていることかーアメリカ主導で。さらに、クリントン長官が今夏のASEAN会議(ハノイ)で、南支那海の諸島の領土問題に口を差し挟んだし、アメリカ以外の国による他国への覇権を座して見逃すことはないと明言した。
このようなアメリカとその同盟国の動きを中国が黙って見ているわけはない。いずれ遠くない将来に、軍事的な衝突が引き起こされる可能性が大であり、アメリカのやり方はそれを挑発している感がある。
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