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10.02.2021

人類の当面する基本問題(15) 企業の様々なごまかし・不正・不法行為(日刊ベリタ2011.05.07)

 

新自由主義下の現在の企業は企業の存亡を賭け、利潤増大を目ざしてあらゆる策を弄し、不法・不正も辞さないし、その傾向は年々悪化している。ここに、アメリカでの数例を報告する。アメリカ以外の国々(日本も含め)でも似たようなことは起っているのだろうが、アメリカはそれが顕著である。下の図は、企業犯罪についてのユーチューブ(http://www.youtube.com/watch?v=vu4B2DqOCWE)の1場面で、アメリカのあらゆる業種の企業が不正を行っていて、企業名の下の赤は最近支払わされた罰金の額を示している。罰金を払っても儲けの方が大きい場合が多いのでこういうことになる。そして、摘発されずに、不正を続けている例はさらに多いものと思われる。こういうことをする企業が、グローバル化

 

 

 

の下で途上国の弱体企業や農民、政体を競争力で圧倒するばかりでなく、ごまかしによって相手を破壊しつつある。日本で現在問題になっているTPPも、参加すれば、農業が破壊されるばかりでなく、こうした米企業に日本市場が振り回されることは必定であろう。

この現象の根底にあるものは、このシリーズの最初「人類の当面する基本問題(1)」(2010.11.06)で述べた法人という、人間的道徳観などの欠如した集団が、政治力を発揮して政治・社会からの規制を排除して、その唯一の目的である「利潤」追求に血道を上げている事実である。この傾向は、これが惹起する貧富の格差の拡大とともに、理性ある人間性とそれに基づく、これまで築き上げてきた人類文明の退化(専制君主制—少数支配体制への逆行)・消滅を意味する。こういうごまかしを行っている企業、ビジネスは、しかし、まだ全体から見ると少数であると信じたい。

 

(1)大学

 こういうことがもっと起りにくいと考えられる大学の例を一つ。アメリカの有力新聞の一つにワシントンポストがある。その子会社の一つに、歴史的な教育機関カプランがある。これは、アメリカでの大学入試に相当するSATなどの試験への訓練学校、いわば予備校である。こうした機関としてカプランは最も歴史が長く、名が知られていた。このカプラン校が、大学として登場したのは、10年ほど前である。アメリカの数カ所にキャンパスをもつが、学生の多くはインターネットを利用してのオンライン教育を受ける学生であり、全米で6万人ほどの学生を有する、「営利企業」である(普通の大学は非営利団体である)。現在、ワシントンポスト社の収入の50%以上が、カプラン大学経営から得られているようである。

そのやり方は、様々な方法が用いられているが、主なものは、政府保障の学生ローン(タイトルIV基金)の利用である。カプラン大の収入の90%がこれだそうである。大学への進学が経済的に難しい学生を焚き付けて(卒業後の就職の機会が多いなどの諌言(ウソ)を使って)、この奨学金(実はローンだが、奨学金を偽装することもしばしば)を保障するからと、学生に仕立て上げる。しかも、こうした学生を、収容能力以上の数を引き入れる。学生が途中で都合により退学しようとすると、帳簿上は在籍していることにして、ローンを引き続き受け取る。(ローンは学生に渡されるのではなく、金融機関から大学に納入される)学生には、ローン契約の正式な書面が渡されることはないらしく、時々、学生はローンで授業料は払われていると思い込んでいるところへ、授業料滞納で次学期受講停止や、卒業免除を完済まで発行しないなどの通知がきて学生を驚かせるようなことがかなり頻繁に起っているらしい。

もう一つ良く知られたオンライン校にフェニックス大がある.ここも同様な方法で、学生ローンを餌にし、それを取得して肥えている。授業そのものがお粗末であること、卒業してもまともな就職口がないなどのことも含めて、学生からの苦情(a)が多い。こうした欺瞞に満ちた大学を経験した人達が、集まって大学を告訴しようかという動きもあるようである。昨年には政府の機関(GAO)がカプラン大を含む15校の(営利)大学の現状を調査し、このような様々な不正・不法を正式に報告したが,大学側は、その報告書が不当だと反対に告訴している。

 

2)賃金泥棒

 

この言葉は、報告(b)の題名に使われている。この報告の簡単な紹介である。この現象はアメリカ全国に蔓延しているらしい。もちろんボスが使用人から直接カネを巻き上げるわけではない。それは、法律に決められた最低賃金以下の賃金しか払わないとか、オーバータイムその他の臨時労働に対してそれ相応のカネを払わないとか、やめた労働者の最後の賃金を払わないなどなどである。これは、レストラン、小売店、工事現場などなどで働く人々、とくにメキシコその他からの不法移民などに対して広く行われている。このような事情なので、正確なデータは得難い。ある研究によれば、ニューヨーク市のみで、1週間におよ1800万ドルが労働者から不当に奪われているそうである。ロスアンジェルスとシカゴの労働者の4分の1は最低賃金以下の給料。

ニューヨーク州では、この容疑で捕まった事業主は、罰金を課せられるが、僅かな額なので、事業主たちは、これは通常の事業費の一部と看做していた。そこで、この度ようやくニューヨーク州では、罰金を増額し、また低賃金に抗議した労働者を脅したり、解雇した場合にも罰金を課す法律を作った。他の州もこれに見習うようである。

 

3)住宅ローン/差し押さえ

 

 2007年ごろから顕著になったいわゆるサブプライムモーゲッジ(住宅ローン)が今回の金融危機の端緒であったことはよく知られている。このサブプライムローンそのものがごまかしであった。サブとは以下という意味であり、プライム(1級)以下を対象とするローンという意味で、本来なら家を買う余裕のあまりない人々を対象にした住宅ローンであり、最初からうまく行かないことがわかっていて貸し付けようとしたものである(本来ならば、そういう低所得層にも住宅を持たせる機会をやろうという良い意図があったはずだが)。どうしてこんなことをするのだろうか。最初は安い利息でローンを貸し付け、しかも往々にして身分不相応な住宅を買わせる。数年後には利息が跳ね上がり、ローンが払えなくなる。そこで、住人はその家を売って借金を返し、家を買い替えるか、そうでなければ貸し付けた側は、抵当に入っていた住宅を差し押さえ、元をとった上に、それまでに払われた利子を懐に入れるというわけで大儲けできるはずだったのである。しかし不動産価格がこの間に大幅に下落してしまったために、取り戻した住宅が、本来の価値を持たなくなってしまった。その上に、多数のローンそのものを再編成して「(金融)証券」化し、売ってしまった(取り扱い手数料などでの利ざやを稼ぐため)。そこで、物件が不良化し、住宅ローン業者の損失を招き、それが金融市場を撹乱した。

さてその後どうなったか。金融業者達は、政府を脅し(too large to fail)て、国税から救済金を巻き上げて、負債をゼロにしたうえに、未だに様々なやりかたで、利益を増大している。こうした企業のトップの年収は上がる一方である。

それでは、被害をうけた消費者のほうはどうか。全然救済されていない。差し押さえを食って路頭に迷う人々が続出した。しかし、この差し押さえの手続きそのものが、また不正・不当に扱われていて、消費者への被害が増大している。まず、差し押さえの為の書類審査が杜撰で、十分な検討を経ずに決定された例が多く発見されて、裁判沙汰になり、多くの州で、差し押さえの一事停止が行われた。差し押さえられた側は、それに不服を唱えたり、取り消しを請求するにも時間を浪費し、手数料を支払わなければならないという不利な点もある。もう一つの問題は、先ほど述べたように、個人のローンが他の多くのローンと組み合わされて「証券」として売られてしまっていることで、個人のローンに問題が発生しても、その苦情の持って行くところが多くの場合は不明瞭になっている点である。ローンを毎月ちゃんと払っていたにも拘らず、差し押さえを食ってしまう例が増えている,それは、この不明瞭さに原因がある。ローンの払いがどこに送られて、どこに正確に記録されているのか、混乱しているケースが多くなっているらしい。そしてこの苦情がどこでどう解決されるのかが非常に不透明で、消費者のほうが苦労している。

 

(4)商品のごまかし

 

商品のごまかしはアメリカに限らず、どこの国のビジネスにも見られる現象である.日本でも様々な仕方で行われている。ラベルと内容の不一致、賞味期限の変更などなど。中国で先年発覚した、メラミン含有のミルクは、その典型例である。普通の商品、例えばブルーベリー入りのパンと称していながら、実際は、着色料を使って作った見せかけのベリーを入れたパンであったり。このような例は枚挙にいとまがない。

 

5)保健業界

 

医療保険はアメリカのガンの一つである。2010年には一応、医療保険についての法規が出来上がったが、保険業界の圧力に完全に屈した形で、市民の医療負担を軽減するようになってはいない。 医療保険に加入している人も、実は、安心していられないのが、アメリカの実情である。それは、私企業である保険会社にとっては、医療(したがって、命)よりも利益が優先されるからである。このような状態で、医療保険に入っていながら、必要な治療を十分に受けられなかったり、治療を受けるために自分の懐から払わざるを得ない状況に追い込まれたりする。(これは、例えば現在まだ実験段階にあるため、保険対象にならないというような正規な場合ではなく、かなり通常の医療で)。アメリカ人の家庭の破産は、医療保険があるにも拘らず余分に出費せざるを得なかった医療費に起因することが多いと言われている。

 

6)製薬会社・医療関係者(医者.研究者、その他)

 

製薬会社は、薬を売って儲ける。どんな場合に人は薬を買うか。健康を害した時である。なら、製薬会社が儲けようとしたら、人を病気にするに越したことはない。様々な方法がある。その一つの方法は、医者と結託して病気をでっち上げ、それに効くとする薬を売りつけることである。それにはどんな病気が適当か。身体的な病気は、かなりはっきり診断可能だし、薬の効果の判断もかなり正確にできるので、あまり適当でない。 精神的な病、これは診断も難しいし、薬の効能の判断も難しく、騙しやすい。

男性の性不備(インポテンツ)は、かなりはっきりと生理的・身体的にわかる。それに対して、たまたま見つけた薬(もとは心臓病のために開発されたもの)が、製薬会社に巨利をもたらした。これに味をしめた製薬業界は、今度は女性の為の薬を開発しようとした。しかし、女性の性障害というのは、男性のそれほど単純ではないし、その定義すら存在しない。そこで、製薬会社が督促して、研究者達に「女性性障害症」なるモノを作り出してもらうことにした。この経過は先に(日刊ベリタ2010.01.14)に簡単に報告した。

近年、学校での子供の行動が問題化した。落ち着きがなく、常に動き廻っていて、授業に集中できないなどの子供が多くなったのだそうである。これをADHDAttentionDeficitHyperactiveDisorder)と名付けた。名付けることによって、それが1種の病気であり、治療の対象になることが正当化される。そしてそういう子供の学校での行動を矯正するために、ADHDと診察された子供1人あたりいくらかの金銭的援助が学校に与えられることになった(もう20年以上前のことである)。そして心理的療法よりも手っ取り早い薬品が安易に用いられるようになった。その一つが、リタリンと称されるもので、多くの子どもに処方されている。ある程度の効果がある場合はあるらしいが、その薬を常用した子どもが成長した後の脳への影響が懸念されている。

ストレスの多い社会では、それによる様々な心理的問題が多くの人に発生するのは避けられない。アメリカに多くて日本に少ない職業の1つが精神療法士であることはよく知られているが、薬品による安易な解決法も広範に行われている。

以上の薬品の奨励は、決して「不正」「不法」とは言えないかもしれないが、そのやり方には「ウソ」多用や、詐欺まがいの面もあり、非常に問題である。そのようなやり方には、大学教授などの権威の名をかたる、いや彼らを製薬会社側に組み入れるとか、特定の薬を擁護する消費者団体なるものをでっち上げて、彼らに(会社との関係は秘して)薬を擁護、欲しがる宣伝をさせるなどなどが、横行している。

 

(a) http://www.ripoffreport.com/directory/

(b) http://www.alternet.org/economy/149338/

 

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