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12.29.2021

人類の当面する基本問題(40) 2021 年になって世界中で死亡率急増−続(日刊ベリタ2021.12.01)

先き(注1)に、2021年になって世界中で死亡率急増という事実の簡単な報告を本サイトに掲載しました。その後も、そうした事実の報告が相次いで出ていますので、その数例を。  まず日本でのデータは、先の報告では2021年5月まででしたが、同じ組織が9月までのデータを発表しています(注2)。それが添付の図1です。数年前と比較して、月間あたり1万人 ほど多くの人が亡くなっています。この図には、新型コロナによる死者を除いた数も表示されていて、この余分の死は、新型コロナと直接関係はない死亡の数です。こうした死者数増加は、3月ごろから始まっているようです。どのような死亡原因が増えているのか、その詳細はまだ検討されていません。変化の時間経過から、ワクチン摂取との関連が示唆されますが、不明確です。  ドイツの研究者が、ドイツにある16の州の死亡率の変化とその州のワクチン摂取率との関連を統計値から計算し、図示したものが発表されました(注3)。それは、本年36週−40週の間の死亡率(Covd-19による死も含めた全死亡率)の、過去5年(2016-2020)の同期間との比率(%で表示)を縦軸に、各州のそれまでのワクチン摂取率を横軸に表示した図(図2)です。すべの州で、この比率は100 %を超え(102.5%-116%)、平均10 %ほど増加しているようです。しかも、ワクチン摂取率の高い州ほど死亡増加率が高いようです。もちろん,ばらつきはありますが。 (注1)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202111131133056 (注2)https://www.wandersolar.com/post/20211126/ (注3)https://stevekirsch.substack.com/p/new-study-from-germany-confirms-higher; Dr. Rolf Steyer and Dr. Gregor Kappler, The higher the vaccination rate, the higher the excess mortality

人類の当面する基本問題(39) 現コロナウイルス感染症:ワクチンの問題(2)(日刊ベリタ2021.11.22)

先(注1)に、生まれて2年ぐらいの新ワクチンのまだ不明な点に関する科学的研究の1例をお知らせした。現ワクチンは、m-RNAを人体に入れてウイルスの抗原と考えられているスパイク(S)−タンパク質を人体細胞に作らせ、それに対する抗体を免疫機構に作らせるというものである。この研究では、S−タンパク質そのものが、体に悪影響を与えるという研究結果であった。その主な影響は、血管内皮細胞へのダメージによる心筋炎などとして現れるようである。  S−タンパク質は、別の影響を与えるという研究結果もある(注2)。これはつい最近(2021.10.13)発表の論文である。これまでの研究で、Covid-19重症患者では、対応する免疫機構の発現が遅く,しかも貧弱であることが屢々見られている。どうしてそうなのかを追求したのがこの研究(注2)である。S−タンパク質(ウイルスからの)は、細胞核に侵入し、DNA修復に関与するBRCA1とか53BP1という重要なタンパク質が、DNAのダメージサイトに近付くことを妨げることによって、DNA修復を阻害することがわかった。これが免疫機構発現を混乱させているというわけである。m-RNAワクチンが作り出すS−タンパク質が、このようにDNA修復作用を邪魔することによって、免疫機構を妨げることも、このワクチンの副作用に寄与しているのではないかと、著者達は云っている。  今回のm-RNAに基づくワクチンには、まだまだ不明なことが多いが、それらを充分に検討せずに、パンデミックという緊急事態下だからとして、その使用をFDA、CDCなどの政府機関やヨーロッパでの相当機関などが承認し、しかも多くの国で、強制されている。充分な検証を行ってからにすべきだったのではないであろうか。  なお、こうした機関による承認を得るためには、その有効性を実証しなければならないので、ワクチン製造社側は、多くの人を対象に、例えば、最初のファイザーの場合は、全部で2万人を2つのグループに分け、一方に真のワクチンを、他方にはニセのワクチンを摂取させ,ワクチン摂取側のほうが、Covid-18に感染する率が低かったと云う結果を得て、97%有効と発表。このような検査は、実際はファイザー社が行ったのではなく、下請け業者にやらせたもののようで、それに関与した技術者などから批判がでている(注3)。  強制の理由とされるのが、パンデミックという状況設定である。その設定であるが、感染者の多発に基づいている。しかし、感染=PCR検査陽性とされているが、その曖昧さは深刻(注4)で、WHOですら、反省を促している。真の感染者数は、PCR陽性者数の数%程度と多くの人が指摘している。 (注1)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202111181655374 (注2)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8538446/ (注3)https://www.bmj.com/content/375/bmj.n2635 (注4)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202010220837044;     http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011090954401; http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011281557466;     http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202012061730390

人類の当面する基本問題(38)現コロナウイルス感染症:ワクチンの問題(日刊ベリタ2021.11.18)

2019年12月に、中国の武漢で重症肺炎として出発した現在のコロナ禍なので、そのウイルスはSARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus-2:respiratory=呼吸器系)と名付けられた。感染症の主なものはやはり肺炎であるが、それ以外の様々な症状があるようである。  最近米国ソーク(Salk)研究所から、実は、このウイルスによる病気は、血流系統への影響が基礎にあることがわかった(注1,2)。すなわち、呼吸器系を主とする感染症ではない。それ以上に、重要な発見はウイルスの作用は、ウイルス全体というより,現在ワクチンの元になっているスパイク(S)タンパク質が、疾患の原因であるらしいことである。なお,現在までの考えは、ウイルスが人体に入って、その表面にあるS−タンパク質が人体の細胞の表層にあるACE2なる酵素と結合して、その細胞に侵入し、自己複製し、作用を及ぼすとされている。なお,ACE2は,肺胞のみならず、血管その他にあり、それが作り出すホルモン・アンジオテンシン2は血圧調整に関係している。  この研究所は他の大学とも共同で、この問題に取り組み、S−タンパク質のみで出来たウイルス形態のものつくりを、動物に摂取したところ、肺や動脈の血管内皮細胞にダメージを与えることを立証した。ウイルス全体ではなく、S−タンパク質のみで起る現象である。そのメカニズムにも言及しているが、それはここでは省略する。  現ワクチンは、S−タンパク質を作るm-RNAを人間に取り入れ、人間の体細胞内で、S−タンパク質をつくらせる。それが人体内で、抗原と認められて、人体の免疫機構が,抗体を作るということになっている。この抗体が、ウイルスが入ってきた時に、人体細胞への侵入を防ぐなどして、感染しないようにしていると考えられているわけである。  ところが,上に述べたことが本当とするならば、ワクチンが作らせるS−タンパク質そのものが、人体に重大な悪影響(主として血管系統のダメージ) を及ぼすという副作用(副作用と呼べるか)があることになる。先に報告した(注3)ことと関連しているであろうか。 (注1) https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCRESAHA.121.318902 (注2) https://www.salk.edu/news-release/the-novel-coronavirus-spike-protein-plays-additional-key-role-in-illness/ (注3) http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202111131133056

人類の当面する基本問題(37)2021 年になって世界中で死亡率急増(日刊ベリタ2021.11.13)

 2020年3月11日にWHOが新型コロナ(SARS-CoV-2)による病気(Covid-19)の感染が世界中に拡大するかも、という予想に基づいて(その時点では、まだ充分な感染拡大はなかった),パンデミックを宣言した。それにより、世界中(とくに、欧米や日本)で、 感染者数、入院患者数、重症者数、死亡者数などが毎時、テレビその他の報道機関で人びとに知らされている。感染を検査するPCR法の問題、死因の特定のいい加減さなどの問題は多い(注1)のだが、それはそれとして、感染を抑えるためには、ワクチンしかないと、欧米各国をはじめ、多くの国でワクチンが義務づけられた。
 使われているワクチンは主として、ウイルスの抗原とされるS−タンパク質を作るとされるm-RNAを使い、それを接種後、人体細胞にこのタンパク質を作らせ、そして、それに対する抗体を作り、ウイルスが入ってきた時に、この抗体で退治するという理論に基づいている。しかし、こうした人体内の過程で、予測されなかった様々な副反応が見つけられるつつある。
 Covid-19の感染者数は、増加・減少を繰り返し,日本では、その5波が収まった状態である。しかし、ヨーロッパでは、現在感染者がまた急増している.もちろん,こうした国でのワクチン摂取率はかなり高いにも拘らずである。しかもCovid-19による死亡者数は、むしろ減少傾向にある。
 ところが、ワクチン接種後のCovid-19による死亡率が、ワクチン非摂取者のそれより高い、すなわち、自然に存在する人間の免疫機構のほうが、ワクチンよりも有効らしいといったデータはかなり見られる(あまり公共機関からは知らされない)。
 こうした報道とは別に、世界中で、今年になって、死亡する人の数(Covid-19ばかりでなく、あらゆる原因による総数)が急増しているというデータが、様々な国で見られる。これはパンデミック報道とは無関係で、公の機関からのデータである。例えば、Mike Whitneyいう人の発表した論文(注2)では,スコットランド、デンマーク、ドイツ、アメリカのそういったデータを示していて、2021年になって、様々な死因による(主として心臓関連)死亡者が通年より急増していること、そして、若者達の死亡率が急増していることを指摘している。
 そこで、日本ではどうか、調べてみたところ、やはり死亡者が日本でも急増しているデータが、厚生労働省の人口動態統計データ(注3)で見られる(添付の図)。今年3—5月には、全死亡者数が通年より増加傾向にあることがわかる。なぜ、こんなに急増しているのか? Mike Whitneyは、ワクチン摂取しかその原因としては考えられないとしている。

(注1)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202010220837044;http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011090954401;http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011171103272;http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011281557466;http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202012061730390;http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202012210923391
(注2)https://www.unz.com/mwhitney/excess-deaths-point-to-depopulation-agenda/
(注3)https://www.wandersolar.com/post/20210802/

11.25.2021

人類の当面する基本問題(36) 人類文明の転換期日を象徴する「3.11」と「9.11」 今年は10年、20年の節目の年(日刊ベリタ2021.01.03)

20213.11日は、コロナ禍のパンデミックがWHOによって宣言されてちょうど1年、東日本大震災、それに伴って発生した福島原発事故から10年の節目の年になります。そして半年後の9.11日は、アメリカ本土(ニューヨーク、ワシントン)でのいわゆる同時多発テロ事件から20年目、そして今より半世紀ほど前の19739.11日は、チリでの選挙で選出された大統領アインデ をピノチェット率いる軍事クーデターで倒すという事件。これは、実は、これによって政権を獲得した側が、アメリカの後押しで、経済の「新自由主義」的施策を始めたという画期的事件で、経済の「新自由主義」の実現(理論はもっと前から)発祥点と考えられている。

 こう見てくると3.119.11は、ともに人類文明の転換期日を象徴しているようである。まず1973年の9.11、チリで始まったとされる経済の「新自由主義」政策が、その後,欧米諸国から始まって、日本,韓国、オーストラリアなどなどの国の経済を支配してしまった。政治的には共産主義である中国も、社会主義の崩壊したロシアでも、経済的には、「新自由主義」的な方式を取っている。それは、経済成長、利潤を最優先としている意味で。ただ、南米のいくつかの国(キューバ、ベネズエラ、エクアドルなど)では、社会主義政党ががんばってはいる。

 1991年にソ連圏が崩壊し、冷戦が終了し、軍備拡大(軍需産業という巨大企業の利益源)が不必要になったアメリカで、都合よく、2001年の9.11テロ事件が発生し、アメリカは、対テロという終局の見えない目的のための軍需拡大を可能にし、軍需産業はますます強大になってきた。そして、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアと戦闘を拡大し、軍需産業を富ませてきた。

 10年前の3.11福島原発事故は、チェルノブイリ事故(1986年)についで、最悪レベルの事故とされている。現状は、しかし、チェルノブイリをはるかに超えた過酷な事故であった。なにしろ、爆発を含めて事故を起こした原子炉は、4基(チェルノブイリは1基)。メルトダウンした核燃料は3基のもの。そのメルトダウンしたものの周辺は放射線量が高すぎて、人間は近づけない(おそらく即死)。これをどう処理するか、いまだに解決策は見出されていない。その上、新自由主義の典型的政策で、被ばくによる病死の隠蔽、その危険性の否定、そして避難者の生活の経済支援などの軽視、原発企業側にとって好都合な施策のみ。この過程では、行政ばかりでなく、司法機関も政府・企業に寄り添い、報道機関もそれに準じている。あらゆる意味で、一般市民を無視している。

 さて、最近の 3.11日。国連保健機構WHOは先年(2019年)発生した新型コロナ(SARS-CoVD-2)による肺炎などを伴う感染症(Covid-19)が拡散し始めた2020年3月11日に「パンデミック」を宣言した。本当に世界中に拡散するかどうか不明瞭な時点で。

 2009年の6.11日に、実は似た様なWHOによるパンデミック宣言が出されたことがある。この時の感染症はスワインフルー(豚フルー)であるが、通常のフルーと大して差がなかった。しかし、パンデミックとされたため、ワクチン注射が多くの国で義務付けられたし、恐怖でパニックに陥った人々は争ってワクチン注射を受けた。このパンデミック宣言の背後には、WHOを支える大製薬会社、ワクチン製造業者などがあり、そうした側からの影響で、パンデミック宣言が出されたらしい。この間の事情については、当時日刊ベリタに報告した(注1)。

 これとほとんど同様なパンデミックと称される現象が現在のCovid-19である。PCR検査による陽性反応を問題のSARS-CoV-2ウイルスに感染したとする方法による感染者数は、2020年末の時点で各国で急増している。(PCR検査陽性=感染とすることの問題点はこの欄でなんどか指摘してきた(注2)。といっても、ほとんど感染者数が消滅した国もある。そして、パンデミックが宣言されてから、わずか8ヶ月足らずの間に、ワクチンが完成,認知され、多くの人に行き渡るレベルの量が生産されるようになり、いくつかの国では接種がはじめられた。これは、ワクチンの製造の歴史からみて、非常に異例である。この現象の全てが、パンデミックーワクチン接種(おそらく義務づけも)大企業(製薬業、ワクチン製造)の利益へと繋がっている。実は、それ以上のより根本的な、社会構造変革の意志が、この現象の底に横たわっているようだが、それは別な機会に。

 感染者,死亡者の数の増加は、日夜、24時間体制で、人々に告げられている。こうした報道は、人々を恐怖に陥れている。しかし、報道されない事実との対比などを検討すると、実はそれほど恐れる必要のないものなのかもしれないのである。

 というのは、どこの国でも、日々、人々はなんらかの原因で死んでいっているのである。日本の例を見てみよう。2014年のデータ(注3)であるが、人口10万あたりの死亡率:全死亡率=997.40(/100,000(すなわち約100人に1人、1%)である。ウイルス肝炎では4.2(/100,000),その他の感染症および寄生虫症で4.0(/100,000)であった。全てのガンによる死亡率は、295.1(/100,000)(全死亡者の29.1%)。なお、インフルエンザのみの死亡率は2018年に2.8 (/100,000)2019年に3.0 (/100,000)であった。 さて、2020年の1230日までの新型コロナによる死者は、発表数に基づいて、2.6(/100,000)である。こうした数値を較べてみると、Covid-19による死亡が突出して多いなどと言えるであろうか。報道機関がこうした数値も、現在の感染者・死亡者数の発表と同時に、人々に伝えていれば、そんなに恐怖を与えることはないのではなかろうか。おそらく、世界的権威とされるWHOによる「パンデミック」という宣言が、報道機関にこうした時間毎の報道を促しているのであろう。こうしたことは、福島原発事故の報道にも見られるように、報道機関がすでに新自由主義勢力の支配下に入ってしまって、視野が狭くなっていることを意味するのであろう。

 その上,以前から指摘していることだが、Covid-19感染者が増大するなか,通常のインフルエンザは、ほとんど消滅している(平年の98%減)という現象。これが本当なのか。どちらも主要な症状は呼吸器系統、インフルエンザ感染をCOVID-19感染と混同している可能性は本当にないのであろうか。全てとはいかないまでも、かなりの部分が。

 もう一つ、指摘しておきたいことは、今回のコロナによる死者の多くは60歳以上の高齢者でしかも持病持ちであり、真の死因が、コロナウイルスによる直接的な死なのか、コロナ感染により持病が悪化したための死なのか、それぞれのケースで充分に検討された上での死者数なのか不明であり、おそらく、真の意味の死者数は、公式発表数よりかなり少ないのではないかと、様々な場面で指摘されている。本日 (2021年1月3日)アメリカ大統領トランプがツイッターで、こうした懸念を表明し、CDCの発表数などはフェイクだと指摘した(注4)。

 ただし、こうした筆者の議論は、COVID-19の危険性を否定しているわけではなく、このコロナウイルス感染症の特殊性肺炎のみならず身体の様々な部分、特に脳への影響が、しかもかなり長期にわたって継続するなどーの深刻さなどを軽視しているわけでない。

 さて、こうして見てきた3.119.11という画期的事件だが、すべて人災である。福島事故は、確かに地震・津波という自然現象に付随したが、東電の安全対策の軽視による人災の面がつよい。コロナ禍は、自然現象ではあろうが、パンデミック宣言は人災として現在の人類に影響を及ぼしている。人類(といってもそのうちの少数だが)は、多数の存続・幸福を主眼とはせず、自分達の利益のために、その権力(金銭と軍事力)の増大しか、眼中にないように見える。多数はこうした面に目をつぶるように仕向けられているようである。

 

 

(注1)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200912131511030

(注2)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202010220837044 http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011090954401;

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202011281557466;

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202012061730390

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202012210923391

(注3https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai12/dl/h6.pdf

(注4)https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1345720107255926784


人類の当面する基本問題(35)生態系の中の人間という種—他生物との共存 (日刊ベリタ2020.12.26)

ウイルス、細菌から始まって、水中の動植物そして地上・空中の動植物、その数百万種ではきかない数の生き物がこの地球上には生存している。人間はその中の1種。こんな事実は、だれでも知っているが、日常そんなことは意識せず、我々人類が地球上で中心的な存在だと思い込んでいる、いやそんな意識もないでしょう。問題は、では人類はそうした生態系の中で、どんなことをしているか、生態系にどんな影響を及ぼしているか、逆に生態系の中の生物は人類にどんな影響を及ぼしているか、それにたいして人類はどう対処しているか。人類の科学技術の進歩は人類の生存そのものを含む生態系に甚大・深刻な影響を及ぼしているのだが。

 

(1)目に見える生態系に対する人類の影響

 

 かってこの問題,人類がどの程度の影響を生態系に及ぼしているかを検討した(注1)ので、その一部を再掲載する。“引用ー人類が現在その植物の全生産量のうちの何パーセントを使用(食糧、医療、住宅,その他直接、間接に)しているかを試算した人がいる。まず全植物の生産量は陸上植物で1.3 x 10^14 kg/year、海その他の水生植物が0.9 x 10^14 kg/year、計2.2 x 10^14  kg/yearである。人類が使用する植物の量は、彼らによると6 x 10^13 kg/year (食糧だけで約1 x 10^13 kg/year)全生産量の27%にもなる(筆者の試算でもおよそ3分の1になる)。種の数でいけば、ホモサピエンスは5百万(未確定)種程ある生物種の一種にすぎない。人間はかなり大きな動物だから、重量で比較するほうが良いだろう。人間の生物圏に占める割合は重量でいうと、約2 x 10^11 kg (人類)/8 x 10^16 kg (全生物)、すなわち0.0003%ほどである。先の27%という数値はかなり議論のあるところだが、それがたとえ数倍も過剰に評価しているとしても、これは大変な量である。同様の試算が地球上の淡水についても行なわれた。人類はやはり全使用可能な淡水の実に30%ほどを使っているそうである。この残りの量で他の生物種が生存していくのはなかなか難しかろう。(勿論、人類の使い古しでも喜んで棲息できる種もあるにはある)この植物や淡水奪取の過程で他の生物の生息環境をも汚染し破壊していく。勿論工業生産に付随する環境破壊も考慮しなければならない。これでは他の生物種が消滅していくのは当然であろう。現在絶滅の危機に瀕しているかその状態に近づきつつある生物種は、目にみえる鳥類、魚類、ほ乳類、両性類、霊長類でおしなべて20-30%ほどだそうである。我々の気がつかないところでもっと多くの生物種が滅んで行っていると考えざるをえない。過去に生物種の消滅期が主なもので5回程あったが、その最大のパーミアン後期では50-60%の生物種が絶滅したようである。これはしかし百万年のオーダーの期間の話であるが、現在のそれはたかだか2-300年の期間のことで、消滅速度でいえば、1万倍程度の急激な変化である。このような急激な生物種の消滅がどのような影響を人類にもたらすか予想がつかない。ー引用終わり”

 現在の環境問題は、どうも「気候変動」とその原因とされる温室効果ガス排出という人為のみに注目されているが、上に引用したように、人類は、広範で深刻な影響を生態系および地球の地上周辺状態に及ぼしていること、そしてそれが人類自身に跳ね返ってきていることを充分に意識していない。

 

(2)環境汚染の生態系および人類への影響

 

人類は、その頭脳により、通常の生物ではできない環境破壊・汚染を拡大してきた。環境破壊問題は、すでに充分に議論されてきたので、ここでは論じる必要はなさそうである。基本的に間違った人類の環境破壊の2つを簡単に論じておこう。これは環境破壊というより人類種を含む生態系全体の破壊である。

 通常の環境破壊には、人類による物理的破壊(森林伐採その他)と化学的破壊(生物が対処できない人工的化学物質の環境への放出に基づく。農薬などの問題)がある。こうした問題は、人間の意志でなんとか変革できる。もちろん、こうなってしまった現状では変革するのは非常に困難ではあるが。もう一つ根本的な問題は、人間が、生命そのものをある程度変革する技術を身につけてしまったことである。すなわち、DNAを恣意的に変えることができるようになってしまって、生物そのものを変えることができる 。GMgene modified)作物などがその例であるが、人間そのものを変革することも可能になりつつある。

 20世紀に始められた「核利用」は、根本的に人間を含めた生態系とは両立し得ない。核利用の場で発生する放射性核からの放射線は、生物が対処できない強力な破壊力を持っており、それが環境に放出されてしまうと、対処の方法がない。環境に放出されなくとも、その破壊力が故に、安全に保管することが困難で、人類はまだ解決法を知らない。したがって、放射性核を大量に作り出す核産業(兵器、平和利用とも)は直ちに地球上から無くすべきなのである。

 

 

(3)ウイルス、細菌レベルでの問題

 

 さて、生物種はそれぞれ自己の生存を継続するという仕掛けを持っている。それは、Richard Dawkinsが「Selfish DNA」で主張したことである。もちろん、環境の変化その他により、生存を継続できないことはある。しかし、出来るかぎりの試みをDNAレベルで行なうようである。

 では、細菌対人間レベルではどうであろう。細菌は、人間が母親から生まれて独立した瞬間から、人体に侵入して、体内で、莫大な数の細菌叢を作る。これらの細菌は人間の体内の人体細胞・組織と共生していて、免疫機構を司る細胞などとも協力関係にある。しかし、細菌は人間にとって異物であり、こうした細菌叢のなかの細胞とは別の細菌が体内に侵入すると、人間の健康に悪影響を及ぼすが、それに免疫機構が対応する。

 細菌そのものは、自己の生存をかけて人体に入り、増殖を試みる。20世紀の始めに、人類は、抗生物質を発見した。これは、違った細菌種が、自己の生存をかけて、他の細胞を滅ぼすために開発した化合物(生物レベレの兵器)である。これを、人間は、細菌感染による病気の治療に利用したー抗生物質。そして、化学的に類似の機能を発揮する化合物を生物から抽出するばかりでなく、化学的にも合成し、多くの抗菌剤(抗生物質はその一部)が作られた。サルファ剤などは、抗生物質の発見以前から知られていたが。こうした抗菌剤が人類に、細菌による感染症病気の治療に大きく貢献した。過去数世紀でのこうした医療の進歩は、多くの場合,全世界での医科学者、医療従事者の協力によって行なわれてきた。その恩恵は人類全体で共有されてきた。

 しかし、細菌のほうは、そうした人間の使用する抗菌剤に打ち勝たなければ、生きていけない。そこで、抗菌剤をなんとか無効にしようと努力する。それが細菌中にあるプラズミッドという主DNAとは別な小さなDNAにそういう能力が蓄えられている。そして、現在では、多くの病原菌が、こうした抗菌剤に抵抗できて、しかも、かなり化学的にも違う抗菌剤へも抵抗できる多剤耐性を持つ菌が続出している。この間の事情は、例えば、吉川昌之介著「細菌の逆襲人と細菌の生存競争」(中公新書)に詳しい。すなわち、自己保存性が発揮されていて、人類に戦争を仕掛けているに等しい。

 さて、ウイルスはどうか。ウイルスは、細菌のような抗菌剤が作用するような場所(細胞壁)を持たないので、抗ウイルス剤というような薬剤は今のところ発明されていない。ウイルスに対しては、今のところ人体の免疫機構を発動させるやりかたとして、ワクチンやサイトカイン相当の化合物がある。前者は、ウイルスが侵入した時に、直ぐ抗体をつくり、免疫機構を発揮させるよう,人体に予め準備させる。後者は、サイトカイン(インターフェロンなど)などの摂取で、免疫機構を活性化し、ウイルス退治を促す。

 ウイルスが、細菌と同様な対抗手段をもっているかどうかは、まだ不明である。しかし、ウイルスのDNA RNA)は比較的安易に変異する。おそらく、宿主の細胞に侵入して、自らを複製させるのだが、その過程は、宿主細胞の通常の役目ではないので、複製の際に、間違いを起こす可能性が高いのであろう。これは、細菌などの対抗手段とは違うが、人間が作る(ある特定ウイルスに対する)ワクチンを無効にする可能性が高い。現在(20201220日)イギリスでは、コロナウイルスへの感染が激増していて、これは感染力の強い変異種が発生したからではないかと言われている。

 こうした異生物を人類にとって不都合だからといって死滅させてしまうことはおそらくできない。共存をどのように、人間に対して最小限の悪影響しか与えないように、人類全体が協力して当らなければならない。

 

 

(4)細菌,ウイルスの利用 

 

細菌その他の微小生物などは、食料の保存その他のための有用な利用の仕方(醸造など)はある。しかし、人間という種は、長年の歴史の中で、細菌,ウイルスなどを悪用してきたし、それが技術的な進歩で、より巧妙になってきているようである。西欧の植民地獲得の場面では、新大陸住民がある種の細菌への免疫をもっていなかった(それまでに、新大陸にはそうした感染菌がいなかったから)ことをいいことに、そうした細菌を散蒔き、大陸住民を沢山死亡させた。それによって、植民地を獲得しえた。ただ、その当事者がこのことを意識してやったかどうかは別だが。もちろん、通常の兵器も用いてはいた。

 第2次大戦中、日本軍は満州で、そうした細菌を兵器として利用する研究を始めた(731部隊)。日本の敗戦後は、そこで得られた情報がアメリカの対応する組織に移行された。細菌兵器は条約で開発が禁止されてはいるが、どうも多くの国で秘密裏に開発が進んでいるようである。人類が全体として、なんとか克服しようとしている細菌やウイルスの脅威を、逆に、人類の殺戮や人民の支配のために利用しようという魂胆である。人類全体に対する犯罪であろう。

 さて今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)であるが、それによるとされた感染者が、201912月初旬中国の武漢で最初に発見され、それが現代の交通手段などを通じて、世界中に拡散したと思われている。しかし、以前にも指摘した(注2)ように、武漢で発見される以前にイタリーやアメリカでこのウイルスに人々が感染していたらしいという証拠(抗体の存在)が見つかっており、そういった地域で武漢以前からウイルスが拡散し始めていたようである。本当の発祥地は今のところ不明である。アメリカでは、政治的理由で、このウイルスを武漢(中国)ウイルスと称してはいるが。

 このウイルスは、中国でコウモリに自然発生し、武漢で人間に移ったとされているが、ウイルスのRNA (DNA)の解析から人工的な変化が加えられた可能性が高いと指摘されたこともある(その論文は後に消去されたらしい)し、武漢にある細菌研究施設、またはアメリカにあるそうした軍事施設から漏れたなどという説も囁かれている(注3;注4)。この後者の場合は、ウイルスが問題になる寸前の201910月にアメリカニューヨークでコロナ型ウイルスの拡散によるパンデミックについてのシミュレーションEvent 201なる会議が行なわれた事実(注5)もあるからである。また、上に述べた感染症などの軍事研究施設が、遺漏などの問題で、2018年に活動停止を命じられたという事実もある。

 その上、先頃から問題にしているPCR検査(間違ってか、意図的にか)による感染者数の見掛け上の増大(注6)で、感染への恐怖心を人々に植え付け、その社会的、経済的、心理的生活に多大の影響を及ぼす結果になり、支配層がその意を強制的に市民に押し付ける(例えば,ロックダウンなどにより)ことを可能にしているようである。このようなことは、先に述べたEvent 201会議でも予測していた。

 このような人類全体への脅威となるウイルス・細菌へは人類全体が様々な工夫をこらして対応しなければならないのだが、現在の状況はその反対のようである。例えば、SARS-CoV-2ウイルスに対するワクチンの開発は、米国,中国、ロシアなどで懸命に行なわれていて、特に米国の大企業が異常な早さで開発に成功したとし、その安全性その他に関する検査もそこそこに、承認され、その使用はいくつかの国ではすでに始まっている。これに対して、アフリカその他の国々から、こうしたワクチンの特許は、不問にし、公開し、どこの国でも製造できる体制にしてほしいと申し出ているが、米国の企業は反対している。

 一方ロシアは、英米よりも早くSputnik Vなるワクチンを開発し使用しているが、外国でもその製造を認めているようである。たとえばトルコでは、このワクチンを国内で製造し始めるようである(注7)。

 

(5)人口問題

 

人類という種の地球上の生態系への影響の根本には、ここ12世紀の人口急増問題がある。この問題に関する一考察を、以前(2008年)この欄に発表した(注8)ので、参照されたい。なお、人口問題については、筆者の著「病む現代文明を超えて持続可能な文明へ」(本の泉社、2013)でも扱っている。

 人口を権力側にとって都合の良いレベルに、なんらかの手段(ワクチンに見せかけた不妊剤その他)で行なおうとしているといった噂もある。現在のコロナ禍は病死ばかりでなく、生活の困難に遭遇して、早死に,自殺などに追い込まれることにより、人口減少を促進する、そんなことを企んでいるといった裏話も囁かれている。

 しかし、人々自らが自覚して、人口を持続可能なレベルに維持するようなことを学び、実行して行かねばならない(注8)。それには、持続可能な文明とはどんなものか、どうしたら実現できるのだろうか、世界中の人々が考え、実行に移していかなければならない(「病む現代文明を超えて持続可能な文明へ」参照)。

 

                                                                                                           

(注1)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200806211025246

(注2)https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa1785/6012472 など

(注3)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58494070U0A420C2EA1000/

(注4)https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202002170000/

(注5)https://centerforhealthsecurity.org/event201/#:~:text=Event%20201.%20The%20Johns%20Hopkins%20Center%20for%20Health,order%20to%20diminish%20large-scale%20economic%20and%20societal%20consequences.

(注6)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202012210923391

(注7)https://www.rt.com/russia/511024-turkey-russian-vaccine-covid/

(注8)http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200811192242533


11.15.2021

人類の当面する基本問題(28)科学とニセ科学の相克(日刊ベリタ2020.10.19)

 

科学というものの本質が現在社会の中で踏みにじられて、非科学的主張が、政治的に科学を装って、しかもそれによって利益を得る側の政治・経済力で、世の中に喧伝され、市民を欺く例が増えている。これには、事象を充分に検討せずに報道するメデアの不勉強と、政権・報道関係の経済支配者への忖度も寄与している。23の例を考えてみる。

 

A)福島の子ども達の甲状腺ガン多発

 

2011年3月の福島第1原発の過酷事故後,福島の子供達の間に甲状腺ガンが多発、正常の罹患率に較べて5-60倍ほど。これは、おそらく実際よりも少ない数値であろうが、ともかく多くの子供達が甲状腺ガンにかかり、その大多数が手術を受けていて、危険な状態のガンであったことが判明している。これは手術を行なった医師が明言している事実。

 さて、チェルノブイリの事故でも、子供達に甲状腺ガンが多発し、事故から放出された放射性物質からの放射線に起因すると認められている。ウクライナでは、事故数ヶ月後から、被ばくしたと考えられた多くの子供達についてその甲状腺への被曝線量を測定しており、その測定値とガン発症率との相関関係も充分に検証されている。その上、被ばくしなかったと考えられる子供達多数のデータを比較し、被ばくしなかったグループには、甲状腺ガンは見られなかったという報告もある。

 さて、福島県・日本政府のこの問題への対応は、科学的を装っての科学的事実の否定の試みである。否定の根拠の主なものは:(1)事故によって放出された放射線量は、チェルノブイリの約7分の1で、チェルノブイリほどの健康障害が生じるはずがない;(2)子ども達全員に検査を施した結果、検出・治療を必要としないようなガンまでを検出した−過剰診断に過ぎない;(3)被ばく線量と発症率には優意な相関性がない。

 福島事故から放出された線量は、構内にある測定器による事故時の空間線量から推定されたものであるが、その推定値には、数倍の過小評価があること、そして事故時点以後も放射性物質は遺漏しつづけており、その総量はチェルノブイリのそれを凌駕(おそらく少なくとも3倍ほど)している。

 手術を必要と判断された子ども達は、先きにも述べたように、手術医が、手術が妥当であったと証言している。過剰診断が原因とするならば、福島以外、特に被ばく量が充分に低い地域の子ども達に同等の検査を行い、差があるかないかを検証するべきだが、これを政府側は徹底的に否定している。その政府側の否定の理由は、検査によってガンが見出されると、不必要な手術が行なわれ、一生甲状腺ホルモンを服用しなければならないなどの迷惑をかけるから。しかし検査によると考えられる過剰診断が、過剰治療になるとは限らない。ガンが見られたと診断されても、治療をするかどうかは別問題である。福島でも、過剰治療が施されたという証拠はない。なんども繰り返すが、手術を担当した医師は、全ての手術は充分に正当化されるものであったと証言している。

 なお、こうした政府側の過剰診断の主張の根拠は、韓国での研究結果であるが、それは、小児甲状腺ガンではなく、一般の人達への検査結果であり、たしかに、大人では、甲状腺ガンが比較小さく、生きている間に手術を必要としないケースが多いことは判明しているが、小児甲状腺ガンは、かなり違うようである。たとえば、福島の子ども達の場合は、かなり大きく、転位もしていたケースがかなりあったようである。

 被ばく線量と罹患率に関しては、政府側(東大,福島医大)からは数報の学術論文が発表されているが、被ばく線量の推測値が充分な根拠を持たないうえに、関係検証のための疫学的・統計的扱いが不当であることが示されていて、科学的根拠とはなり得ていない。

 

B)気候変動

 

現在の地球温暖化の主要な(90%以上)原因が、人為的な温室効果ガス(特に2酸化炭素)の増大であるというのが、科学的に検証されたものであるというのが、気候変動運動の主張である。しかし、人為による2酸化炭素などもなかった地球の全歴史45億年にわたって気候は変動し続けてきた。そして地球上生命の消滅に近い影響を及ぼすような現象も何回も起っている。

 現在の問題は、(1)温暖化の90%以上の原因は2酸化炭素の人為的増大によるのか、(2)現在観測されている異常気象(台風、集中豪雨、山林火災など)が、温暖化によって起っているのか、という2点である。

 (1)の点に関しては、今からおよそ200年前(産業革命)までの、人類による2酸化炭素の排出が顕著でなかった期間でも、温暖化も寒冷もあったこと、つい最近(20年ほど前まで)までの地球温度の変化は、太陽の活動と併行していたこと、もっと遡れば、地球と太陽との距離の変化などによっていたことなど、人為と無関係な現象であったことなどを指摘しておきたい。

 (2)異常気象も、確かに、ここ数年は顕著になっているようである。しかし、これも、少なくとも数世紀の長期にわたって異常気象がどの程度起っていたかを充分に検討する必要がある。

 こうした充分な検討も含めないで、何らかの仮定を儲けてのシミュレーションだけで、2酸化炭素の増大量だけが現温暖化の原因であるとするのは、科学的ではない。おそらく、2酸化炭素の増大も寄与しているとしても、温度上昇の原因の90%以上というのは充分に検討しなければならない。

 地球の温度(地表面、海洋表面、地表といっても水面からの距離はなどなど)といっても、実際は、各地点で、温度は異なる。そうした広範な、温度の変化をどう、地球全体の温度の変化とするかだけでも、この問題は非常に複雑である。現在の地球の気候変動は、自然現象,人為現象など様々な原因が錯綜しており、確かに、産業革命後、そして特に過去200年ほどの人類の、環境への影響の総体の結果も寄与しているはずである。なお、この問題に関しては、(注1)および「気候変動と原発」(注2)も参照されたい。

 

 

C)コロナ禍(Covid-19)の治療(医薬品対ワクチン)

 

201911月に端を発したとされる現在のコロナ禍(Covid-19)は、まだ不明なことが多いが、パンデミック宣言もあり、世界中を恐怖に陥れ、人類全体の生きる道である経済を根底から揺るがしている。ここでは、科学と非科学の抗争が顕著である。

 根本的な問題にはPCR検査の妥当性、集団免疫などがあるが、それは今は差し置いて、医薬対ワクチンの問題について考えてみる。

 科学的に見て、ワクチンは特定病原(菌、ウイルス)に対する抗体を体に作らせ、実際にそうした病原に感染した場合に抗体を作り出すという獲得免疫を植え付けるというもので、その有効性はかなりの例ではっきり検証されていると考えて良いと思う。問題は、特定の病気に対して、有効で安全なもの(酷い副作用が多発しない)が速やかに出来るかどうか。おそらく、長年を掛けて試行錯誤,検証(人体実験までを含めて)を繰り返せば、人類の英知は、有効なワクチンを開発することは可能であろう。ただし、現今のワクチンには、感染予防作用はあるにしても、長期保存などの目的のために、様々な添加物が加えられているケースが多く、それが深刻な副作用を及ぼすケースがかなり見られている。

 それはさておき、問題は、緊急なケースで、現在のCovid-19に有効で安全で感染拡大を防ぎえるものをいかに速やかに開発できるかである。そして、パンデミックと称されているので、広範なワクチン使用が必要とされ、ワクチン開発企業にとっては、成功すれば、莫大な利益が期待できる。 

 ワクチンは、感染拡大を抑える効果があるが、現在感染し治療を必要としているケースには役立たない。このためには、医薬その他の治療が必要である。Covid-19に感染したが,重症化を防ぎ、速やかに回復を促す医薬品の開発も重要である。

 こうした薬品の一つに、マラリアに1936年ぐらいから使われていたハイドロキシクロロキン(HCQまたはクロロキンCQ)が、Covid-19にも有効であることが、かなり沢山の医師によって報告されていた(例えば(注3)2020.04.17発表)。この薬品が現コロナの前に発生したSARSコロナウイルスにも有効であることはわかっていた(注4)。

 ところが、こうした薬品の有効性が確立されて、安価で広範に使用されると、新たに新薬を開発している企業やワクチン開発者にとっては不都合なのである。特に、アメリカのGilead Sciences なる会社のレムデシビルなる新薬およびワクチンなどとの争いのような現象が起っているのである。ここではその1例を紹介する。

 かなり早い時期(2020年3月11日)に世界保健機構(WHO)はパンデミックを宣言し、ワクチン開発の後押しを明確にした。多くの国で、ワクチン開発競争が始まった。特にアメリカでは、特定大企業にワクチン開発が集中し、その開発には、メリンダ・ビル・ゲイツ財団などが後押しをし、NIAIDの長であるアンソニー・ファウチ博士がその開発に賭けている。また、レムデシビルなる新薬もトランプ大統領がCovid-14に感染したとされた際には、投与されたと報道されている。

 HCGCQの有効性がかなりの医師によって主張され、使用され始めたのだが、20205月の段階で、イギリスの有名医学誌ランセットに世界各国からデータを集めて検討したところ、HCGCQには今回のCovid-19には有効性が認められなかったという論文が発表された(注5)。この論文に対して疑問をもった科学者その他が、論文の根拠になった大量のデータの信憑性を著者達に糾したところ、曖昧な返事しかえられなかった。でっち上げのデータであったようなのであり、この論文は、ランセット誌から削除された。

 ところが、この論文の、“HCQCQは、Covid-19には無効、むしろ害あり”というのが、WHOの主張になり、HCQCQの使用は禁止された。

 なお、2009年に発生したスワインフルー(豚フルー)が、やはりWHOによってパンデミックとされた。このフルーは、通常のインフルエンザとあまり違わないものと判明し、やはり、製薬業界のプレッシャーでパンデミックとされたということは、十分に検証された(2009年の(注6、7など))。製造されたワクチンは各国政府に買い取られていたが、無駄とわかり、廃棄された。しかし、ワクチン業者はおおいに儲けたのである。

 

 

 

(注1http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201910150820372

(注2) http://vsa9.blogspot.com/2020/08/blog-post.html 

(注3https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30296-6/fulltext

(注4) Virology Journal, 2, article number; 69 (2006)

(注5) Mehra MR, Desai SS, Ruschitzka F, Patel AN, "Hydroxychloroquine or chloroquine with or without a macrolide for treatment of COVID-19: a multinational registry analysis", Lancet. doi:10.1016/S0140-6736(20)31180-6

(注6) http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200912131511030

(注7) http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200912231038193

10.05.2021

人類の当面する基本問題(26) 病気や薬剤のでっち上げ—ADHDとガーダシル(日刊ベリタ2013.09.09)

先頃、日本の数カ所の大学で、ある医薬品の効用についての研究論文の作成に、その医薬品製造会社の元社員が,関与していた;その主な統計的分析がその元社員によるものであって、その医薬の効用が余分に強調された;結果、その医薬品が,無効用なのにも拘らず、販売が促進されたという事件が報道された。おそらくこれはこうした研究というものを悪用して薬剤効果をでっち上げるという例の1つだが、それこそ氷山の一角に過ぎないと思われる。

基本問題は2つ。1つは企業という組織が、利益追求を第1の目標にしていること。もう1つは,研究なる活動が、研究費なるカネを必要としていること。様々な企業がそれぞれ利益追求することに邁進していることが、現代文明の基本的な、 一番大きな問題であることは、拙著「病む現代文明を超えて持続可能な文明へ」(本泉社,2013)で強調した。アメリカは軍需産業依存に成ってしまった為に、戦争を続けることに固執している。軍需産業にとっては、戦争こそが儲けの最大の顧客である。医療・医薬産業にとっては、医療や医薬品を売ることが、利益のもとである。ということは,人々が医療を必要とする条件を作り出すこと、医薬品を買わせる状況を作り出すことができれば都合が良い。すなわち,こうした産業にとっては,人間の病気が顧客である。もちろん,人間・生き物は病気は避けられないものであり、病気の軽減や回復に貢献することは必要かつ、有意義である。しかし,ここに利益優先が忍び込むことは、企業の論理として避けがたい。

研究者の側から見ると、研究という活動を継続して、研究者としての生き方を続けようとすると、研究に必要なカネをなんとか確保しなければならない。カネの出所が公であれ,私的なものであれ、それに飛びつくことは、研究で生きようとする人にとっては、非常に魅力的であるし,それが得られるかどうかは、研究者にとっては死活問題である。現在、原子力関係に携わっている大部分の研究者は、原子力産業やその後ろ盾(政府など)から研究費が支給されていて、そのカネの元を失わない為には、原子力産業にとって都合の悪い研究やそのような研究結果があっても、発表できないし,しない。製薬会社などの私企業からの研究費をもらう研究者が、そのカネの出所に不都合な結果の発表はせず、都合の良い体裁を整える改竄をしがちなことも、なかなか避けられない。最初に述べたのがその1例であることは論を待たない。

こうした現象は、日本に限ったわけではない。スワインフルーのワクチン問題は2009-2010年ごろ、この欄でなんどか報告した。さて,最近明らかになったこうした例を報告する。

ADHD (Attention Deficit Hyperactive Disorder)なる病気名は日本でも用いられようになってきたようである。この病気を発明した医者の一人が,死を前にして、その経緯を告白したのだそうである。アメリカの精神科医の団体(APA=American Psychiatric Association)は数年おきにDMSDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)を発行する。Eisenberg博士は,1968年のそのマニュアル作成者の一人で、子どものHyperkinetic reaction of childhoodなる概念を発表し、他のメンバーもこれを精神疾患の1つと認めた。しかし,その原因(脳の異常や,脳内の化学物質のバランスの欠如などの生理的原因)は不明,その研究も追求されなかった。これは後にADHDと名前を変えて、精神疾患とされた。名前を獲得すると、一人歩きを始め、それに対応して薬剤が考案された。そして、学校経営で、ちょっと不都合がある子どもを容易に、ADHDと認定することが、普及した。学校政策で、こうした問題のある子がいると援助をするようになり、学校側も援助ほしさに、安易にADHDを増やした。この子供達の多くは,リタリンなどの薬品が処方され、服用させられている。この過程で、利益を得たのは、主として、製薬会社と精神科医である。ブッルクヘイブン国立研究所の研究によると、リタリンは,医薬品としては、コカインに似ているが、脳への害の可能性はコカインよりも高いということであった。さて,このEisenberg博士は、201222日付けドイツの週刊誌シュピーゲルで「ADHDは、でっち上げられた病気の典型例である」という発言を残し、その7ヶ月後にこの世を去った(a)。

もう1つ、子宮頸ガンの予防ワクチン、ガーダシルの問題。日本でも,深刻な副作用が多いことから、最近強制的接種は考え直されているようである。筆者は既に、この覧で警告を出してはいた(落合栄一郎:日刊ベリタ2010.01.14; 2012.06.28)。このガーダシル開発に関与した研究者が、最近、ガーダシルは効果がなく、むしろ危険のほうが多いという発言をした(b)。なおこの問題はアメリカのCBSニュースでもとりあげられた(c)。Diane Harper博士が、この発言をした人物であり、このワクチン開発の主要人物であった。発言は、「このワクチンの副作用は深刻で、副作用発現率は、子宮頸ガンの死亡率に匹敵する」というものである。このワクチンの副作用による死亡は、公式機関で過少に報告され、そのため, このワクチンは安全であるという印象を世間に与えているとも云うし、結論的には「このワクチン接種には何らの利益もない」ということになる。その上、たいがいの子宮頸癌は、「1年、多くても2年以内に自然治癒する」と、2009年の国際会議で発言している。

(しかし、その後、彼女は、こうした発言を取り消している)。

(a)http://www.naturalnews.com/041607_psychiatry_ADHD_fake_diseases.html

派は駆使は(b)http://www.naturalnews.com/041644_Gardasil_vaccination_scam_HPV_vaccine.html

(c) http://www.cbsnews.com/2100-500690_162-5253431.html


10.04.2021

人類の当面する基本問題(22) 人間社会の専門分化と体制維持(日刊ベリタ2012.03.07)

人間社会が拡大し、複雑になるにしたがって、社会の営みが分化してきた。これはやむを得ない傾向ではあろうが、社会構造が高度化するにしたがって、さらに分化傾向が激しくなり、様々な弊害が生じている。問題の根本は、その専門化した分野に携わる人間は、自分の専門分野がどのように社会全体のなかで機能しているかを意識することが少なく、専門分野自体がその専門家の全世界になってしまう。そして、問題が生じても、専門分野維持に固執しがちである。それは、専門分野がそのまま維持されることが自分の地位を安泰にさせるからである。専門分野の問題点を指摘する内部告発者は少なく、しかもその分野の専門家集団から排除される。現在の人類社会は、数多くの専門家集団から成り立っている。

70億に達した人類が、この地球上で生息している。もちろん我々は、この素晴らしい環境を約870万(最近のデータ)種の生き物と共有している。この地球上に現世人類が出現したのは200万年ほど前。20000年程ぐらい前までは、人類も他の生物とあまり違わない、すなわち、他の生物や環境から構成される生態系にあまり衝撃を与えないような、生態系と調和した生き方をしていたものと思う。

やがて、人類は火を発見し、道具を作り出した。そしてその道具を使って、他の生物を殺す専門家に発展した。もちろん他の動物達もその生存のためには、他の生き物を殺さざるを得ないが、人類は、その生存のための必要以上の、同類をも含む動物殺戮をする専門家になった。そのために、マンモスなどの多くの種を絶滅させ、生態系を崩し始めた。もちろんその時点では、人類は自分達がなにをやっているかについての意識は持ち合わせてはいなかったではあろう。

さて農業を発明して、自然が提供する以上の食物を作れるようになったので、人類の数は急激に増えていった。小集団が、大きな集団に成長して、その集団を統御する必要が生じ、集団構成員の役割は分化し、専門家集団が形成し始めた。集団を統率する人間とそれを補佐する人間達、食料を生産したり分配したりする人間達などなど。そして現代社会は、多数の専門家集団からなっている。政治家達、官僚たち(その中にまだ細かく別れた専門領域の官僚)、経済を握る人達、報道機関、健康を司る様々な集団(医者、医療機関、医療保険など)、教育者達(これもさらに様々な専門家集団に)、科学者・技術者(これもさらに細かく専門に分化)などなど、すべてをここに尽くすことは不可能である。

東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第1原子力発電所の事故とそれに絡む様々な現象に専門家なるものが登場し、彼らが専門家を標榜して発言することが国民から顰蹙をかうことがしばしばである。そしてここに専門分化した社会の根本問題が潜んでいる。この原発事故関連で、原発に関与している研究者・技術者、それから研究費などを得ることによって研究を維持している研究者などの総体を「原子村」と呼ぶようである。なお原子村には、科学者・技術者以外の、原発企業や原発管理機構、安全管理機構などなどに携わる官僚達も含まれるが、これらは、専門家とは別にしておく。

原発の事故、その内容と原因、そして放射性物質漏出の結果,すなわち放射性物質の分布、放射線量と健康への影響などは、科学・技術の範疇に属する。先ず指摘しておかねばならないのは、原爆・原発は、人類にとってつい最近、わずか半世紀強の歴史しかない。その間の原爆、原発の開発は、軍事・経済目的を主として行われてきた。そのために、これらがもたらす負の影響は、専門家といわれる人達は、過小評価しがちであった。それは、最初に述べた専門家というものが、自分の専門領域にマイナスになることには、目をつぶる傾向にあるからである。日本の主要大学の原子力工学その他で力を持つ人々は、原発擁護によって、自分達の命の糧をえてきた。原発の危険性に意を注ぐ人達は、仲間はずれにされ、冷遇されてきた。残念ながら、これが、多くの専門家集団の性格である。

この分野,特に低レベルの放射線の内部被曝についての人類の知識、理解はまだまだ非常に少なく、浅い。それにも拘らず、いわゆる専門家が、その影響を過小評価したことを、いわば事実かの如く発言してはばからない。といっても、現在の人類の得た知識とデータからは、低レベル放射線の健康への様々な影響を、科学的に立証することは、23の例を除いて非常に困難ではある。例外は、ヨ−ドー131と甲状腺障害(ガンも含む)、ラドンと肺がんなど、原因−結果の関連がかなり明瞭な場合である。しかし、これとても、低いレベルなのに本当にガンまでに発展するのか、他の要因が関与していないかなど、不明確な部分がないわけではない。そして、「低レベルの放射線の安全性」を強調して、だから原発の事故は怖くない、しかもこれからは、原発の安全性はさらに高めるのだからという論理に繋げられる。原子村の人々は、原発の安全神話が崩壊した後、こんどはこの「放射能の安全神話」を普及させようとしている。文科省も教科書にそのようなことを明記して、子ども達、国民を欺くことに加担している。(「(高エネルギー)放射線が生命と相容れない」ことは、ここですでに議論した:落合、日刊ベリタ、2011.12.31)。

    これは、専門家集団というものが、自己の存亡を賭けて、社会全体の不利益を無視した発言・行動をすることの卑近な例である。軍事専門家(職業軍人、軍需企業など)も、軍事を増強すること、一人でも多くの人を殺すことを、そしてそれを効率的に行うことを使命と考えているし、そのために意欲を燃やす。多くの技術者や科学者も、自分達の成果が社会や人類、環境などにどんな負の影響を与えるだろうかに意を用いることなく、自己の成果達成に邁進している。その上に、企業の利潤追求の精神が、こうした技術者や科学者などの専門家を督励して、さらにその精神を発揮し易くしている。これに疑問を抱けば、その職場を追われることは必定である。生きる道を断たれる。こうした専門家集団の自己の領域以外への配慮欠如が、現在の複雑社会を更に複雑にしているし、経済や社会の正常化の足かせになっていることが多い。すなわち、専門家集団は必然的に体制維持派になっている。


10.02.2021

人類の当面する基本問題(15) 企業の様々なごまかし・不正・不法行為(日刊ベリタ2011.05.07)

 

新自由主義下の現在の企業は企業の存亡を賭け、利潤増大を目ざしてあらゆる策を弄し、不法・不正も辞さないし、その傾向は年々悪化している。ここに、アメリカでの数例を報告する。アメリカ以外の国々(日本も含め)でも似たようなことは起っているのだろうが、アメリカはそれが顕著である。下の図は、企業犯罪についてのユーチューブ(http://www.youtube.com/watch?v=vu4B2DqOCWE)の1場面で、アメリカのあらゆる業種の企業が不正を行っていて、企業名の下の赤は最近支払わされた罰金の額を示している。罰金を払っても儲けの方が大きい場合が多いのでこういうことになる。そして、摘発されずに、不正を続けている例はさらに多いものと思われる。こういうことをする企業が、グローバル化

 

 

 

の下で途上国の弱体企業や農民、政体を競争力で圧倒するばかりでなく、ごまかしによって相手を破壊しつつある。日本で現在問題になっているTPPも、参加すれば、農業が破壊されるばかりでなく、こうした米企業に日本市場が振り回されることは必定であろう。

この現象の根底にあるものは、このシリーズの最初「人類の当面する基本問題(1)」(2010.11.06)で述べた法人という、人間的道徳観などの欠如した集団が、政治力を発揮して政治・社会からの規制を排除して、その唯一の目的である「利潤」追求に血道を上げている事実である。この傾向は、これが惹起する貧富の格差の拡大とともに、理性ある人間性とそれに基づく、これまで築き上げてきた人類文明の退化(専制君主制—少数支配体制への逆行)・消滅を意味する。こういうごまかしを行っている企業、ビジネスは、しかし、まだ全体から見ると少数であると信じたい。

 

(1)大学

 こういうことがもっと起りにくいと考えられる大学の例を一つ。アメリカの有力新聞の一つにワシントンポストがある。その子会社の一つに、歴史的な教育機関カプランがある。これは、アメリカでの大学入試に相当するSATなどの試験への訓練学校、いわば予備校である。こうした機関としてカプランは最も歴史が長く、名が知られていた。このカプラン校が、大学として登場したのは、10年ほど前である。アメリカの数カ所にキャンパスをもつが、学生の多くはインターネットを利用してのオンライン教育を受ける学生であり、全米で6万人ほどの学生を有する、「営利企業」である(普通の大学は非営利団体である)。現在、ワシントンポスト社の収入の50%以上が、カプラン大学経営から得られているようである。

そのやり方は、様々な方法が用いられているが、主なものは、政府保障の学生ローン(タイトルIV基金)の利用である。カプラン大の収入の90%がこれだそうである。大学への進学が経済的に難しい学生を焚き付けて(卒業後の就職の機会が多いなどの諌言(ウソ)を使って)、この奨学金(実はローンだが、奨学金を偽装することもしばしば)を保障するからと、学生に仕立て上げる。しかも、こうした学生を、収容能力以上の数を引き入れる。学生が途中で都合により退学しようとすると、帳簿上は在籍していることにして、ローンを引き続き受け取る。(ローンは学生に渡されるのではなく、金融機関から大学に納入される)学生には、ローン契約の正式な書面が渡されることはないらしく、時々、学生はローンで授業料は払われていると思い込んでいるところへ、授業料滞納で次学期受講停止や、卒業免除を完済まで発行しないなどの通知がきて学生を驚かせるようなことがかなり頻繁に起っているらしい。

もう一つ良く知られたオンライン校にフェニックス大がある.ここも同様な方法で、学生ローンを餌にし、それを取得して肥えている。授業そのものがお粗末であること、卒業してもまともな就職口がないなどのことも含めて、学生からの苦情(a)が多い。こうした欺瞞に満ちた大学を経験した人達が、集まって大学を告訴しようかという動きもあるようである。昨年には政府の機関(GAO)がカプラン大を含む15校の(営利)大学の現状を調査し、このような様々な不正・不法を正式に報告したが,大学側は、その報告書が不当だと反対に告訴している。

 

2)賃金泥棒

 

この言葉は、報告(b)の題名に使われている。この報告の簡単な紹介である。この現象はアメリカ全国に蔓延しているらしい。もちろんボスが使用人から直接カネを巻き上げるわけではない。それは、法律に決められた最低賃金以下の賃金しか払わないとか、オーバータイムその他の臨時労働に対してそれ相応のカネを払わないとか、やめた労働者の最後の賃金を払わないなどなどである。これは、レストラン、小売店、工事現場などなどで働く人々、とくにメキシコその他からの不法移民などに対して広く行われている。このような事情なので、正確なデータは得難い。ある研究によれば、ニューヨーク市のみで、1週間におよ1800万ドルが労働者から不当に奪われているそうである。ロスアンジェルスとシカゴの労働者の4分の1は最低賃金以下の給料。

ニューヨーク州では、この容疑で捕まった事業主は、罰金を課せられるが、僅かな額なので、事業主たちは、これは通常の事業費の一部と看做していた。そこで、この度ようやくニューヨーク州では、罰金を増額し、また低賃金に抗議した労働者を脅したり、解雇した場合にも罰金を課す法律を作った。他の州もこれに見習うようである。

 

3)住宅ローン/差し押さえ

 

 2007年ごろから顕著になったいわゆるサブプライムモーゲッジ(住宅ローン)が今回の金融危機の端緒であったことはよく知られている。このサブプライムローンそのものがごまかしであった。サブとは以下という意味であり、プライム(1級)以下を対象とするローンという意味で、本来なら家を買う余裕のあまりない人々を対象にした住宅ローンであり、最初からうまく行かないことがわかっていて貸し付けようとしたものである(本来ならば、そういう低所得層にも住宅を持たせる機会をやろうという良い意図があったはずだが)。どうしてこんなことをするのだろうか。最初は安い利息でローンを貸し付け、しかも往々にして身分不相応な住宅を買わせる。数年後には利息が跳ね上がり、ローンが払えなくなる。そこで、住人はその家を売って借金を返し、家を買い替えるか、そうでなければ貸し付けた側は、抵当に入っていた住宅を差し押さえ、元をとった上に、それまでに払われた利子を懐に入れるというわけで大儲けできるはずだったのである。しかし不動産価格がこの間に大幅に下落してしまったために、取り戻した住宅が、本来の価値を持たなくなってしまった。その上に、多数のローンそのものを再編成して「(金融)証券」化し、売ってしまった(取り扱い手数料などでの利ざやを稼ぐため)。そこで、物件が不良化し、住宅ローン業者の損失を招き、それが金融市場を撹乱した。

さてその後どうなったか。金融業者達は、政府を脅し(too large to fail)て、国税から救済金を巻き上げて、負債をゼロにしたうえに、未だに様々なやりかたで、利益を増大している。こうした企業のトップの年収は上がる一方である。

それでは、被害をうけた消費者のほうはどうか。全然救済されていない。差し押さえを食って路頭に迷う人々が続出した。しかし、この差し押さえの手続きそのものが、また不正・不当に扱われていて、消費者への被害が増大している。まず、差し押さえの為の書類審査が杜撰で、十分な検討を経ずに決定された例が多く発見されて、裁判沙汰になり、多くの州で、差し押さえの一事停止が行われた。差し押さえられた側は、それに不服を唱えたり、取り消しを請求するにも時間を浪費し、手数料を支払わなければならないという不利な点もある。もう一つの問題は、先ほど述べたように、個人のローンが他の多くのローンと組み合わされて「証券」として売られてしまっていることで、個人のローンに問題が発生しても、その苦情の持って行くところが多くの場合は不明瞭になっている点である。ローンを毎月ちゃんと払っていたにも拘らず、差し押さえを食ってしまう例が増えている,それは、この不明瞭さに原因がある。ローンの払いがどこに送られて、どこに正確に記録されているのか、混乱しているケースが多くなっているらしい。そしてこの苦情がどこでどう解決されるのかが非常に不透明で、消費者のほうが苦労している。

 

(4)商品のごまかし

 

商品のごまかしはアメリカに限らず、どこの国のビジネスにも見られる現象である.日本でも様々な仕方で行われている。ラベルと内容の不一致、賞味期限の変更などなど。中国で先年発覚した、メラミン含有のミルクは、その典型例である。普通の商品、例えばブルーベリー入りのパンと称していながら、実際は、着色料を使って作った見せかけのベリーを入れたパンであったり。このような例は枚挙にいとまがない。

 

5)保健業界

 

医療保険はアメリカのガンの一つである。2010年には一応、医療保険についての法規が出来上がったが、保険業界の圧力に完全に屈した形で、市民の医療負担を軽減するようになってはいない。 医療保険に加入している人も、実は、安心していられないのが、アメリカの実情である。それは、私企業である保険会社にとっては、医療(したがって、命)よりも利益が優先されるからである。このような状態で、医療保険に入っていながら、必要な治療を十分に受けられなかったり、治療を受けるために自分の懐から払わざるを得ない状況に追い込まれたりする。(これは、例えば現在まだ実験段階にあるため、保険対象にならないというような正規な場合ではなく、かなり通常の医療で)。アメリカ人の家庭の破産は、医療保険があるにも拘らず余分に出費せざるを得なかった医療費に起因することが多いと言われている。

 

6)製薬会社・医療関係者(医者.研究者、その他)

 

製薬会社は、薬を売って儲ける。どんな場合に人は薬を買うか。健康を害した時である。なら、製薬会社が儲けようとしたら、人を病気にするに越したことはない。様々な方法がある。その一つの方法は、医者と結託して病気をでっち上げ、それに効くとする薬を売りつけることである。それにはどんな病気が適当か。身体的な病気は、かなりはっきり診断可能だし、薬の効果の判断もかなり正確にできるので、あまり適当でない。 精神的な病、これは診断も難しいし、薬の効能の判断も難しく、騙しやすい。

男性の性不備(インポテンツ)は、かなりはっきりと生理的・身体的にわかる。それに対して、たまたま見つけた薬(もとは心臓病のために開発されたもの)が、製薬会社に巨利をもたらした。これに味をしめた製薬業界は、今度は女性の為の薬を開発しようとした。しかし、女性の性障害というのは、男性のそれほど単純ではないし、その定義すら存在しない。そこで、製薬会社が督促して、研究者達に「女性性障害症」なるモノを作り出してもらうことにした。この経過は先に(日刊ベリタ2010.01.14)に簡単に報告した。

近年、学校での子供の行動が問題化した。落ち着きがなく、常に動き廻っていて、授業に集中できないなどの子供が多くなったのだそうである。これをADHDAttentionDeficitHyperactiveDisorder)と名付けた。名付けることによって、それが1種の病気であり、治療の対象になることが正当化される。そしてそういう子供の学校での行動を矯正するために、ADHDと診察された子供1人あたりいくらかの金銭的援助が学校に与えられることになった(もう20年以上前のことである)。そして心理的療法よりも手っ取り早い薬品が安易に用いられるようになった。その一つが、リタリンと称されるもので、多くの子どもに処方されている。ある程度の効果がある場合はあるらしいが、その薬を常用した子どもが成長した後の脳への影響が懸念されている。

ストレスの多い社会では、それによる様々な心理的問題が多くの人に発生するのは避けられない。アメリカに多くて日本に少ない職業の1つが精神療法士であることはよく知られているが、薬品による安易な解決法も広範に行われている。

以上の薬品の奨励は、決して「不正」「不法」とは言えないかもしれないが、そのやり方には「ウソ」多用や、詐欺まがいの面もあり、非常に問題である。そのようなやり方には、大学教授などの権威の名をかたる、いや彼らを製薬会社側に組み入れるとか、特定の薬を擁護する消費者団体なるものをでっち上げて、彼らに(会社との関係は秘して)薬を擁護、欲しがる宣伝をさせるなどなどが、横行している。

 

(a) http://www.ripoffreport.com/directory/

(b) http://www.alternet.org/economy/149338/