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9.23.2021

人類の当面する基本問題(5) 資源獲得競争 (日刊ベリタ2010.12.01)

現実問題として人類の直面する明白な問題の一つは、資源の枯渇に伴う、その獲得競争であろう。石油をめぐっては、すでに様々な国際紛争を引き起こしている。大量に必要とするが資源としては存在量の比較的少ない「銅」などの金属類、それにいわゆるハイテクに必要な希土類金属(レアーアース)、そしてこれからの電気自動車その他のための電池の材料であるリチュームなど、様々な資源は存在場所が限られていて、量的にも少なく、それらの資源を確保すべく多くの国が凌ぎを削っている。もっと基本的な「水」の確保に基づく角逐も懸念される。

根本に、人々の「モノ、製品」への飽くなき欲望があり、というよりは、欲望をかき立てる(成長)市場経済体制があり、それを充足させて儲けようとする欲望がある。この点中国の場合は、個人的な欲望というよりは、中国国民全体の物質的生活向上への渇望が、中国政府をして執拗な資源確保へ走らせている(中国の問題は「人類の当面する基本問題」シリーズで別に論じる)。中国では現在このような段階(大衆消費)に達しているが、インド,ブラジル、東南アジア各国もすぐ後に続くであろう。しかし、これらの国は政治体制が中国とは異なり、国民の政府への要求の程度は中国ほどではない。

いずれにしても、人類が「モノ」を欲しがるかぎり、資源獲得競争は続く。資源は有限でしかない。月とか火星に資源を求めるという動きもあるが、技術的には可能になるかもしれないが、経済的には無理であろう。その有限な資源も地球上に平等に分布していればまだしも、その分布は非常に偏在している。そして現在のところ、地球上の人類は国という地域社会にわかれていて、その地域にある資源はその地域が所有することになっている。そして境界は往々にして国家間の力関係で決められている。しかも個人であろうと国であろうと、現在は「所有」ということは神聖で、所有者以外の人間や国が、勝手に取り上げることは通常はできない。

ここでの基本問題は、(1)国と国との境(特に海上)というものが曖昧であり、境界線周辺にある資源はどちらの国に属するか、(2)資源を欲しい国が、資源を持つ国からどのように資源を獲得するかの二つである。資源が払底してくれば、その値段は高騰するであろうから、資源獲得はますます困難・熾烈になる。いずれは、資源獲得のための武力衝突が起る可能性が高い(特に、中国と欧米間で)。これは、現在のアメリカ(NATO諸国も含む)による(石油資源を目ざしての)アフガニスタン・イラク侵略のような一方的侵攻以上のものである。

さてこの問題の解決策であるが、解決策の第1は根本的解決法で、地球市民が地球上の再生不能資源は人類全体に属するものであり、したがって資源は必要に応じて、公平に各国に分配されるべきということ、そして再生不能資源は十分に倹約して使用されるべきことに関して合意が得られること。こうしたことは、国際的協定の下、国際調停機関を設立して管理にあたる。このような協定は、天然資源ばかりでなく、大分性格は違うが、「土地」「水」についても作られるべきである。このような理想的方法に各国が合意することは、ナショナリズムに凝り固まってしまっている現人類には当分、無理な相談ではあろう。

解決策の第2は、資源は産出国所有のものであるとしても、国家間で資源・サービス・製品などを相互に納得のいく仕方で供給・提供しあう協定を結び、武力行使を伴わずに実行すること。具体的にはどうするか、非常に難しいこともあろうが、なんとか妥協点を見いださねばならない。曖昧な境界線周辺の資源開発も双方の十分な交渉によって、同様な仕方で、合意点を見つけなければならない。

以上、資源獲得が各国間で武力を使わずに行われたとしても、その先に問題がまだある。それは、このような情勢で、資源がかなり急速に消費されてしまうことである。資源の枯渇も、今のような人類文明の消滅を意味する。そこで、第1の解決策の付帯条件「再生不可能資源は十分に倹約して使うべき」(再生可能資源もその可能限界内で)ということに関して全世界の合意がえられることが必須である。

現在の大方の問題意識は、下降した経済をどう立て直し、経済を成長させるかにあるようである。目先だけに注目していたら、そのような考えしか浮かばないのであろうが、長期の人類文明に想いをいたせば、経済(物質的、金銭的)をいつまでも拡大することが不可能なことは自ずと明らかになるであろう。そして、政治家も、経済学者も企業家も、この不可能性を原点にして、経済を立て直す方策を立てねばならないのだが。どのような経済体制がありうるかに関しての簡単な考察は、拙著「アメリカ文明の終焉から持続可能な文明へ」(注;無料でダウンロード可)で行った。

 

(注:http://www.e-bookland.net/gateway_a/details.aspx?bookid=EBLS10071200&c=238)

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